月 2016-09-03 18:33:52 |
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主様という言葉に、銀色は僅かな頭痛と何か記憶の靄が晴れるような感覚を覚えた。
『……主様…ぉ…、…らず、……ら…』
かつて銀色はその名を誰かに呼ばれたような気がする。
遠くに聞こえたあの声は、いったい誰の声なのだろう。
頭痛の痛みと、記憶を辿る事に意識が逸れていた銀色を現実に戻したのは、障子の向こうに響いた何かが壊れたような、鈍く激しい騒音だった。
「何があったんだ!織!糸!」
驚いた銀色は自身が立ち聞きしていた事を忘れ、形振りを構わず織の部屋に駆け込む。
だがその様子に驚いたのは糸だけで、織の方は微かな反応もない。
その仕草は織が予め銀色の存在に気づいていたという事だろう。
だが銀色はそんな織よりも、壊れた奥の障子に叩きつけられた糸の方へ視線を向ける。
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