YUKI 2016-08-21 01:55:44 |
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「あの、今日は早めにお店を締めて、子猫を迎えに行ってきますので」
先に口を開いたのは藤白の方だった。
言葉なく立ち尽くしている天宮の横を、目線を逸らし小走りで藤白が通る。
「では、せめて手伝いを…」
「お客様にそんな事はさせられません」
ようやく出た天宮の言葉にも、藤白は笑顔で拒絶する。
『お客様』という藤白の言葉が、今ほど天宮に残酷に突き刺さった瞬間はないだろう。
しかしその言葉が痛いのは、藤白も同じである。
その証拠に藤白の微笑みはいつもの暖かさとは違い、酷く泣きそうなものだ。
その表情を見せまいと、外の看板を外しに向かう藤白の後を、寂しげな表情を浮かべ天宮は見つめるしかない。
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