「夏は暑いものですし、諦めるしかありませんね」 店のドアを開けながら藤白に言ったのは、すでに馴染みのお客様の天宮である。 天宮の手元には、なにやら小さなケーキの箱らしき物があった。 「暑中見舞いです、冷蔵庫に入れて後で召し上がってください」 渡されながらも藤白は戸惑う。 「このような物は受け取れません」 経営者としてお客様から物を貰うのは、良い事ではないだろう。