都々 2016-06-18 21:21:15 |
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( ぼんやりと霞んでいた視界が次第にはっきりとしたものへ変わっていく。辺りは薄暗い闇に包まれていたが全くの暗闇ではないらしく、木の葉が風に揺られている様子が見て取れた。ぎこちない動作で首を動かし下を向く。視界に入る己の身体はずぶ濡れで、見覚えのない白色のワンピースも同じく水を含んでいた。地面に座ったままの足には草と土の感触、髪から滑り落ちる水滴がそこに染み込まれていく。だらりと力を抜いていた腕に力を込め右手を胸の辺りまで持ち上げれば、指を少しずつ開きながらまじまじとそれを見つめる。やがて気が済んだのかその手を地面に付け、今度は両手を支えに立ち上がろうと試みていた。震える足は体を支えきれず一度へたり込んでしまったものの、側の木に体重をかけることでどうにか立ち上がる。それだけの動作でも上がる息、けれど木々の向こうに湖を見つければ吸い寄せられるように一歩また一歩と足を進め、やがて辿り着いた水辺に座り込む。ほんの少しの距離を歩いただけであったが、がくがくと震える足は暫く動かせそうにない。視線を落とすとそこには一人の少女がいた。全身水浸しのその少女はひどく驚いた様子でこちらを見つめている。少女が瞬きをすると同時にその瞳から雫がこぼれ、水面に波紋が広がった。ゆらゆらと揺れる水面に映った彼女には、己の瞳から流れ出る温かなそれが一体何なのか、まだ分からない。顔を出したばかりの太陽の光が木々の間を抜けて、声も上げずにただ静かに涙を流し続ける少女をそっと照らした )
▼ この恋が、どうか悲劇と呼ばれませんように。
恋を知った金魚 / 一夏限りの奇跡
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