n 2015-08-12 16:23:27 |
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桜緋 __ >49
…。
(相手の悲痛に歪む顔を見た時、言葉を出す事が出来なかった。複雑な感情だけが胸を支配し言葉にならない恐怖や自身との葛藤が渦巻いた。瞳から零れ落ちるそれを、止める事も出来ずに近付いてきた相手にあんな表情をさせてしまうなんて。自身は何て弱い刀なのだろうか。主を護るどころかこれでは本当に役立たずではないか。再度、ごめんなさい、と言葉を喉元まで運ぶも相手が己から離れてしまえばその言葉は飲み込むしかなく。斬りつけたものを治す力があるなら、せめて心の傷さえも治す能力があればいいのに。無能な人生を歩むくらいなら、せめて具現化など出来ず一緒刀としての生涯を歩めたなら良かったのに。幾ら考えようとも、自身にこびり付く根をはる様に伸びた感情だけは拭えないものなのだ。微かな、弱々しい声が闇に落ちた。あれ程までに怖かった相手の背中が、何だかとても小さく見えた。相手が放つ、棘の中にある優しい言葉。護るのは己の方なのに、自身は主に護られている。悔しさやら悲しさやら絶望やらがどっと押し寄せたかと思えば口に出たのは「…もう、僕を捨ててください」であり、それは相手にこれ以上の迷惑を掛けたくないという思いが込められており)
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