土佐人 2015-05-26 05:15:51 |
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シンポジウムの翌々日。
“八の月”が終わろうとしている。
Aiセンターの焼け跡を、俺は高階病院長と公用車の後部座席から眺めていた。東堂スーパーバイザーを成田まで見送った帰りに、桜宮岬に立ち寄ったのだ。リヴァイアサンを破壊され、Aiセンター存続が不可能になったため、東堂は帰米を決めた。
「マイボスには申し訳ないが、職場がなくなってしまってはねえ」と淋しそうに呟いたのが意外だった。誰が見ても当然の判断に思えたからだ。
どうやら東堂は思いのほか、Aiセンターを気に入ってくれたらしい。別れ際に、Aiセンターが復活すれば、即座に戻ってくると約束したくらいだ。
だが、その約束が果たされる日がもうこないということも、お互いわかっていた。
海堂尊『ケルベロスの肖像』27章 飛べ、綿毛 本文 田口公平 高階権太 東堂文昭 より
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