不可思議少女と荒本君【SS】

不可思議少女と荒本君【SS】

魅威咲 狐珀  2015-05-25 22:23:52 ID:59ef8691c
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荒本 鋭理(あらもと えいり)は読心不可能のイレギュラーである。

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  • No.1 by 魅威咲 狐珀  2015-05-25 22:51:20 ID:59ef8691c

一昨日は7人、昨日は11人を相手にした。
オレは無傷だった。
全員、一発殴っただけで気絶した。
動きが遅い。拳が弱い。ひ弱だ。
すぐに倒れる。
俺はまだ、本気など出していないのに、だ。弱い。弱すぎる。
なのに、何故集団を作っただけで、群れただけで強くなったなどと錯覚するのだろうか。集団など、ただの足手まといだろうに。
理解、できない。

今日も、またそんなひ弱な連中の相手をするのことになる…

* * *


「オラァァ!!やっちまえぇ!!」
「へっ!流石にこの数が相手じゃ、どうしようもねぇだろォ?」
鉄パイプやら、ナイフやらを持った男達が約20人、一斉に突撃してくる。ここは、数年前に潰れた廃工場だ。
そのずっと先には、リーダーらしき金髪の男が木刀を左肩に乗せて立っている。
目標は、奴か。
「おらぁ!!余所見してんじゃ……」
「あー…遅いわ…」
腹に一発入れる。たったそれだけで
「うぐぁ……!?」
すぐに終わる。
手にしていた鉄パイプが、カラカランという音をたてて地面に落ち、男は膝を着き、倒れる。
「んだありゃ!?」
「は、早ぇ……!?」
それだけで、
たった一人やられただけで瞬時に動揺が広がる。
所詮は、ひ弱な連中の集まりだ。そんなもんだろうが。
この隙を見逃してカッコつけるほど俺はナルシストじゃぁない。即座に距離を詰める。
男達の青ざめた顔をよそに、次々に攻撃を繰り出す。殴った勢いを利用し、次の攻撃に繋げる。
殴り、回り、蹴り、投げ飛ばし、どんどん墜としていく。
「ふっ!はっ!んんっ!!」
「ぐぁ!!?」
「ぶッ!?」
「ぎゃッ!?!?」
……………他愛もない。

  • No.2 by ノアール狐  2015-05-26 20:27:22 ID:63abb97d8

一通り動き終えた頃には、8人ほどが地面にのびていた。
他の連中は絶句中で、隙だらけだ。中には戦意を喪失し、あとずさるヤツまでいる。
腰抜けもいいところだ。
そんな中でオレは、ふと気になるものを見つけた。
小さなサバイバルナイフを手にした、ロングヘアの男の前に詰め寄る。
「あー…なぁ、お前」
「!?」
案の定、身構える。
だが、そんなことは関係ない。
オレは、自分の腰の辺りを指差して言った。
「タグが付いたままだぞ?」
「へ?」
拍子抜けしたように自分のジーンズを見る。そしてそこにあるタグを見付けると、手にしていたサバイバルナイフで切り取ろうとする。
その隙に一発殴ってやった。


そこからもまた、一方的な暴力の始まりだった。
殴り、蹴り、次々とぶっ飛ばしていく。
「ほっ……ふん……はっ……あー……だりー……はぁ……」
「ぶぐっ!?」
「うがッ!?」
「うぉぁぁぁッ!?」
「がふッ!?」
約一分で片付け終わった。
服に付いた砂埃を払い、奥にいる金髪男に視線を移すと、木刀を既に構えており、臨戦状態になった様子が伺えた。
「……早いな。正直勝てる気がしない」
「あー……んじゃ、やめるかぁ?オレっち、そろそろ疲れたんだけど……」
「ははは、冗談抜かすなよ。掠り傷どころか、息切れすらしてないじゃないか?」
化け物が、と金髪男は言う。
そうかもしれない。オレのこの力は、本当に化け物じみている。たが、今はどうでもいい。さっさと終わらせて帰る。そして……
「早いとこ片付ける。じゃねぇとタイムセールに間に合わねぇんだわ、これが……」
「ふ、それじゃぁ始めようかァ!!」
そうして今日最後の喧嘩が始まった。

* * *

  • No.3 by ノアール狐  2015-06-19 23:00:06 ID:63abb97d8

………

決着は、呆気ないモノだ。
金髪男がこっちにとびかかってきた瞬間に、回し蹴りをした。

すると金髪男はまるでヒキガエルが潰れたような声を出し、そのままぶっ飛んで行った。
呆気ないな。
「………」
「グゥ…!!」
打ち所が悪かったのだろう。肋骨の辺りを押さえている。見るからに、苦しそうだ。
自業自得
そんな言葉が浮かぶ。
しかし……
しかしながら………

「……大丈夫か?」
「ぐぅぅ……は、ははは……喧嘩相手の心配とは、正義の味方気取りもいいところだ…ぜ……うぐ……」
「……ハァ……別に正義を気取ってるわけじゃねーし。いいから怪我人はおとなしくしてな。」
「………」
金髪男に肩を貸す。周りを見れば、すでに他の奴等は退散した後のようで、鉄パイプやら何やらが散乱しているだけだった。
あー……タイムセール間に合わないな絶対。
そんなことを考えながら出口へ向かう。
すると、金髪男がポケットに手を突っ込んだ。
「…おい。今更抵抗とか、無しにしてくれ。これ以上ひどくしたくねぇし…」
「いや、違う……。車の手配をだ……」
「そうか。ケータイ、ぶっ壊れてないといいな」
「さぁな……壊れてたらまた買うだけ……うぐ……」
この様子だと、病院につれていくにしても一人じゃやっぱり無理そうだな…
…………早く帰りてぇ……

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