千春が、暗い車窓に映った三船の横顔を見つめながら、ぽつんと言う。 「いい病院ね、東城大って」 千春の、握りしめた指先に力がこもる。三船は唇を噛むと俯いた。 いい病院なんて、ない。いい医者がいる病院があるだけだ。 胸の中に熱いかたまりが込み上げてくる。 海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』疾風--2006 より