土佐人 2014-11-24 06:43:24 |
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「桐生恭一です」
よく通るバリトン。自己紹介の一言で、部屋の空気が真夏に塗り変えられる。一重瞼の細い目、通った鼻筋、大きな口。眼の前に立たされるだけで感じる風圧。隠しきれずに溢れ出る自信。全身を覆う、うんざりするほど強烈な生命力。
派手なヤツ。ミーハー体質の女なら、一目でいちころだろう。ただし俺にとっては、一緒に飲みにいきたくなるようなタイプではない。
猛禽類を思い浮かべた。鷲?鷹?それともハゲタカだろうか。
「田口公平です」
名は体を表す、とはよく言ったものだ。彼はどこから見ても「桐生恭一」だし俺の方は「田口公平」以外の何ものでもない。なぜ、世の中はかくも不公平なのだろう。自己紹介をするたびに、俺は公平と名付けた親をこっそりなじる。
海堂尊『チーム・バチスタの栄光』本文より
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