土佐人 2014-11-24 06:43:24 |
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春美とマーズは、ともに頭を撃ち抜かれていた。それでも、相手の身体に回した手を離さず、生まれた時からずっと一緒に育ってきた兄妹のように、互いにいたわりながらくずおれた。春美は完全に即死だったが、死の直前にわずかに残った意識の中で、マーズは思っていた。
それでも自分は地球を爆破しない----。
たとえ四十二億のほとんどの人間が信じられなくとも、今のマーズには、山口玲子と山口春美という二人の人間だけは、確実に信じられるからである。そんな些細なことでも、彼には審判の重要な根拠になり得る気がしていた。
春美が買ってきてくれたCD-ROMで読んだ『愛情』を思い出しながら、その不思議な少年は生き絶えた。
OVA『マーズ(横山光輝原作)』(小説・朝日ソノラマ文庫‖サイレント・ハルマゲドン)本文より
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