土佐人 2014-11-24 06:43:24 |
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「以前国を焼いた軍に味方し、懸命に地球を救おうとしてくれた艦(ふね)を撃て、か……」
軍本部からの指示が伝えられたとき、オーブ護衛艦隊の指揮をを執るトダカ一佐が漏らした言葉はそういう言葉だった。昔気質の軍人で、少々癖のある人物だが、人望は厚い。
それを聞いて副官も、同情の視線を窓外の戦艦に投げた。“ミネルバ”は寡兵(かへい)にもかかわらず健闘していた。が、すでにあちこちに被弾し、滑らかな装甲は穿(うが)たれて黒煙を上げている。あれを修理したのはモルゲンレーテだと聞いた。自分たちが直したものを、自分たちが破壊するとは、皮肉だ。
「こういうの、恩知らずって言うんじゃないと思うんだがねぇ、俺は」
トダカは気難しけな顔に、静かな憤慨の表情を浮かべ、嘆かわしいというように首を振る。
「----政治の世界にはない言葉かもしれんが」
彼はまさに皮肉を口にしたあと、兵士に命じた。
「警告開始、砲は“ミネルバ”の艦首前方に向けろ。----絶対に当てるなよ」
「は?----はい」
命令を受けた武器管制が戸惑いの声を上げ、副官は驚いて反論する。
「司令!それでは命令に……」
命令では警告が受け入れられなければ攻撃、と、はっきり言われている。が、トダカは偏屈そうに鼻を鳴らした。
「知るか。俺は政治家じゃないんだ」
アニメ『機動戦士ガンダムSEED Destiny』小説 第一巻 本文 トダカ一佐 副官 より
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