土佐人 2014-11-24 06:43:24 |
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「画像解析に時間がかかる?調査官らしからぬ言葉ですね。だったら解析を後回しにして犯罪概念の枠組みを証明してしまえばいい。どうやって北山元局長は殺されたのか、それは高階病院長には不可能な殺しだという一点だけ証明すればいいんです。殺しの矛盾点に絞って問題を解決してから、画像解析を補強材料にすればいい」
白鳥は珍しく、黙って俺の言葉に耳を傾けていたが、やがてぽつんと呟いた。
「画像解析は、不要……?」
なにやら深く考え込んでいる。やがて白鳥は顔を上げると一気に言い放つ。
「そうか、わかったぞ」
いきなりモニタを切り替えパソコンにして、計算をタイプし始める。微分や積分の記号を含んだ複雑な数式や関数が三十行くらい続いただろうか。
最後の一行を書き終えた白鳥は、天井を仰いで大きなため息をつく。
「そういうことだったのか……」
白鳥はCTを画面に映し出す。大脳の脳幹部に白銀の弾丸が描出されている画像だ。
「ありがと。田口センセは、僕に原点を思い出させてくれた。そう、何も難しいことはなかった。一枚のCT画像にすべての答えがあったんだ。これで高階先生の無罪は証明され、最悪の事態は回避されたよ」
海堂尊『アリアドネの弾丸』27章 停滞 田口公平 白鳥圭輔 より
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