土佐人 2014-11-24 06:43:24 |
通報 |
月のマスドライバーを攻撃するということは即ち、マイヨ・プラートと対決しなければならないということだ。そして、自分か生き残るためには、リンダの兄を殺さなければならない。
自分が生き残るためには-----
ケーンは暗黒の宇宙に消えたギニール中尉の絶叫を思いだした。
『軍隊では、こう教えるんだ。戦場では生き残ることが、もっとも大切なことだってな。だが、そんなのは嘘っぱちだ……あれは兵隊を死にに行かせるための詭弁だ!』
ケーンはギニールの言葉に、一つつけくわえることにした。
『生き残るためには、人殺しにならなくてはならない』
自分は今から人殺しになりにいく。
深い疲労感が、重いコートのようにまとわりついていた。まだ十六なのに、百歳になったような気分だった。
(略)
何かを終わらせなければならないと思った。
いや、何かを始めねばならない。
自分が自分自身てあるために。
戦士マイヨ・プラートでありつづけるために。
マイヨはゆっくりと手を伸ばした。ひどく手が重い。自分の手ではないような感じだ。
クレスタの細い首にその手がかかった。
「なに、マイヨ?」虹色のクレスタの瞳が信じられないものを見たように瞬いた。
「……僕を殺すつもりなの?」
「……」
「これからもっと面白くなるのに、どうしてそんなことをするの?ゲームをもっと続けようよ。ネッ、そうしよう」
モニターにはドラグナーが向かってくるのが大きく映しだされといた。
白い機体は新しくつけられた羽根をを大きく広げている。
「わたしは行かねばなりません。あの者たちがわたしを呼んでいるのです」
マスドライバーは手に力をこめた。
手の中で、新しい時代が砕ける音がした。
アニメ『機甲戦記ドラグナー』小説版 本文 より
トピック検索 |