土佐人 2014-11-24 06:43:24 |
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「その命の力を、逃げるために使うな!生きるために使わせるんだ!オルファンにも…………!」
自分の口をついて出た言葉の意味を、勇自身も気づいていない。感じたままを叫んだにすぎないのだが、それこそ、勇自身の行動が言葉通りのことを示していた。
「できるわけない!」
シラーの声は悲鳴だった。
「できる!」
ユウ・ブレンは、発射された光弾をかわして、グランチャーに組み付くと、その首を押さえた。
「目を覚ませ、シラー!」
「うるさい!みんな、死んでしまえ!」
「死にたくないもん!」
「……!」
クマゾーの声は、接触しているアンチボディを通して、シラーに生の声として聞こえていた。
「死ぬと冷たいもん……!死んだ母ちゃん、氷だったも!なにも言わないも!」
泣き叫ぶクマゾーの声が、シラーの中で、寒さに打ちのめされた弟たちと重なる。その手の力を失った冷たい感触も、シラーには、目の前の現実のように思い出された。
「う……!」
シラーの頬に、押さえきれずに溢れた涙が溢れた。
グランチャーの近ごろが抜けていくのを感じたユウ・ブレンは、巻いていた手を離した。
そのまま、グランチャーは海底へ、オルファンへと落ちてゆく。
その姿を見ながら、シラー・グラスという女性の心の傷の深さを、勇は思った。
自分の傷は、時間をかけても自分で治してゆくしかない。己れを救済するためには、己れが立つしかないのだ。
アニメ『ブレンパワード』第十二章「浮上」小説 本文 より
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