土佐人 2014-11-24 06:43:24 |
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取調室で萩原はすべてを自供した。
十五年前にも、疑惑を上層部に伝えたこと。富士見署でのポストを用意する代わりに、疑惑については忘れろと命じられたこと。出世と引き換えに、疑惑を封じこめたこと。心の重荷を分散させたくなって、蘭子の母親に手紙を書いたこと。そして、がんが今回の犯行を決意させたこと。
右京が最後に質問した。
「あなたは確かに今夜、北条氏を殺すつもりでしたか?あるいは、真相を知るために脅しただけとも言える。そのあたりがまだ判然としません」
「もちろん殺そうと思っていましたよ」萩原は迷わずにそう言ったあと、少しばかり躊躇した。「でもね、杉下さん、あなたの前では人殺しはできない」
「ありがとう」
右京が萩原の目を見て、つぶやいた。
ドラマ『相棒』第九話「特命係、最後の事件」小説 本文 より
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