紳士とヒーローの非日常

えー、駄目か？今からｱﾙが寝るなら暇だろ？
(跨ったことを指摘され不満気な表情浮べればただ単に暇だというのを言い。「まぁ…苛めなくてもｱﾙは可愛いけどな」と、ぶつぶつ呟いてはどう見ても呆れている相手の様子を見つめて。

暇ならホラー映画でも見ないかい？一人じゃ怖いんだ…今回のはすっごく怖いらしいからね。
(確かに暇なので見ていないホラー映画を相手と見ようと気軽に誘うがお願いするように目元を潤ませて相手を見つめて。「さっきから俺を可愛いっていうけど俺は君の方が可愛いと思うんだぞ！」考えるのをやめて口が先にものをいうと真剣な顔を向けていて

う…わかった。ﾎﾗｰ映画だな！見ようぜ！
(うるっとした瞳で見つめられればきゅんと胸を高鳴らせ、相手の上から降りては床に座り。真剣な顔で意外なことを言われれば「は？俺のどこが可愛いんだ？俺はｱﾙの方が可愛いと思うんだけどな…」と、不思議そうな表情で首傾げ

サンキューなんだぞ！
(ニッコリと満面の笑みでソファから降りると会議で使っていた書類の紙に紛れていたDVDを取り出しプレイヤーへと入れて。相手の隣に膝を抱えて座ると「俺だって君に可愛いって言われてそんな気持ちなんだぞ」自分に可愛げなんてないと思い眉を軽く寄せながらリモコンでテレビの操作をして

怖いからって泣くなよ？
(どのくらい怖いのかよく分からないが相手が泣いたら手に負えないので一応そう言い。自分と同じ思いだったのかと知れば「そうだったのか。お互い相手のことを可愛いって思ってるんだな」と、嬉しそうに笑み浮かべればさり気なくぎゅっと手を握り

いくら怖くでも泣くわけないじゃないか。
(早速テレビから映像が流れると堂々と泣かない宣言をするも繋いだ手を無意識に握り返し。全然怖くない場面なので横目で相手を見るとそっと相手に擦り寄り「そうだね」と短く笑って返し

ま、ﾋｰﾛｰだったら泣かないのが普通だよな？
(泣かないと強く言い切った相手に対し挑発的に答えながら画面見つめ。擦り寄ってきたのが分かれば顔には出さないように嬉しく思っているも、若干口元を上げ笑みを浮べていて←

もっ…もちろん…なんだぞ！
(テレビ画面に映るお化けなどを見てビクビクと身体を震わせるも強がっていて。相手を見ることなく画面に釘付けだが急に画面の隅からゾンビのようなものが出てくれば声が出ないほどの悲鳴をあげ無意識に相手に抱きつき←

本当に大丈夫か？
(お化けが出るたびに震える様子を見てはﾆﾔﾆﾔ笑み浮べながら問い掛けるも突然抱き締められれば「ちょ…ｱﾙ!?」と、頬染めつつ驚くも何が怖いのかと不思議そうにﾃﾚﾋﾞを見て。

…ぎゃーー！
(相手を抱きしめたまま恐る恐るテレビを見るもどの場面をみても叫んでは相手の胸に顔をうずくめ。半ば泣きそうになりながら相手を見ると「怖いよ！今のみたかい？」テレビを指差しながら必死に伝えており

おい、大丈夫か？
(怯えている様子を見れば抱き締めながら背中摩ってあげつつ心配そうに問いかけるも、実際あまり怖くなく冷静な表情で居れば相手の問いに「いや。あれは実際作り物だぜ？本物じゃねぇから安心しろ」と頭撫でつつ答え

作り物？本物じゃないのかい？
(落ち着いた相手の声に目を丸くすると相手を抱きしめながら再びテレビを見て。本物でないとわかれば怖さも薄れて自身も落ち着きを取り戻し抱きしめている力を緩めるも体制は変わらず

本物じゃねぇよ。あんなにはっきり幽霊が見えると思うか？実際は透けてるんだぜ？
(怖がる相手を可愛いと思いながら幽霊について説明し何とか納得させようとして。ﾁﾗｯと横にいる妖精さんを見てはお前らみたいな優しい幽霊だったらいいのにな、なんて変な事を考え。

実際っていうけど君が見てるのは幻覚だろう？
(相手に見える妖精などについては信じていずまたいつもの幻覚の話だろうと首を傾げて見つめるとテレビから聞こえた女性の悲鳴に肩をビクつかせ画面を見れば「もし君のいう通り透けてるならアレだって透けてるじゃないか！」と画面に映る女性の後ろにいる薄い影を指差して

なっ！幻覚じゃねぇよ！
(妖精=幻覚と言われすぐに否定しては何故他の人には見えないのか不思議に思い。指差された方向を見るも大して驚きもせず冷静に「あれはだな。撮影した時に後から合成でﾊﾟｿｺﾝを使って作ったんだよ」と、説明し。

…病院に行くのをおすすめするよ。
(静かに相手の肩を叩き真剣な顔で告げると何事もなかったように相手から離れて隣に座りなおし。しっかりとした説明に納得はしたが「わかってても怖いものは怖いんだぞ」と怖いのは変わらずにテレビを見ていて

なっ！俺の頭がおかしいって言うのかよ！
(何故自分以外の人には妖精さんが見えないのか改めて不思議な表情浮かべつつ反論しては、相手が元の位置に戻ってしまったことを少し残念に思い「どうしても怖いなら俺のかなり近くに居ていいぜ？」と、笑み浮かべながら問い掛け

俺や他の皆に見えないものを見てるんだからそう思いたくなるじゃないか！
(何処を見渡しても妖精もユニコーンも見えるはずがないので当たり前のように言い返しては困ったような顔をして。テレビを見ながら相手の言葉を聞くと腕を掴み「これで十分さ」と照れ隠しするように相手の顔を見ずにいて

やっぱ見えねぇのか…近くに居るのにな
(チラッと妖精の方を見ては残念そうにぽつり呟いて。腕を掴まれれば「なぁ、このﾃﾚﾋﾞが終わったら次何するか？」もう少しで終わりそうな雰囲気なのでﾃﾚﾋﾞを見つつ次のことを尋ね

その妖精とか幽霊は君になんていうんだい？
(相手の目線が変わったことに気づきまた幻覚を見ているんだと思うも少し変わった質問を投げかければテレビではエンドロールが流れ。立ち上がることなく腕を掴みながら「残っているスコーンを食べながら帰るつもりさ。もうそろそろ外も暗いからね」と薄暗い外を窓越しに見ながら少し名残惜しそうに呟いて