柊 2014-06-16 01:29:42 |
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>柊
これは恐らく松かさだな。…向こうに植わっている松の木の実だと聞いたことある。
(体調が良くなったと言葉を紡ぐ相手の顔色は確かに随分と回復したように見え密かに安堵する。続けて差し出されたものは己も見慣れぬ物だったが、春に松の木から“秋になれば実をつける”と聞いていた為きっとそれだろうと、庭の隅にある松の木を指差しながら言い、相手の手を引きその下まで来る。その下にはまだ笠の開いていない松ぼっくりが数個落ちていてその中から一つ拾い上げ
…実際にこうして触れられるとはな。
叶わぬ願いだと思っていたが此処ではこうして自分の知らない四季を感じることが出来る。
(嬉しいと口には出さぬが無表情の瞳の奥を微かに輝かせ、穏やかな声色で言いながら松笠をくるっと指で回し弄ぶ。それから、ちらと相手を見ると手にする松笠を相手の頭のてっぺんにちょこんと器用に乗せれば「似合ってる」と悪戯に小さく喉で笑い。そんな時、不意に木枯らしが吹き抜け、微かに身を震わせては小さくくしゃみを零し「……寒い」と低く呟くと袖に腕を通し、漸く素足で立っている事に気が付いて
…一度、中に入ろう。寒くて敵わない。
(未だ相手の頭の上に留まる松笠に目をやりつつ、いつもより早口に言えば袖に腕を通したまま縁側に上がり「暖かい御茶が飲みたいな」と呟いては珍しく相手に甘え、訴えかけるような物言いをし、動きたくないとでも言うようにその場に座って。
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