柊 2014-06-16 01:29:42 |
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>柊
(木から香る嗅いだ事のない匂い。足から感じる土の感触。頬を撫でる風。全てが新鮮で己の心を高揚させ肌寒さを忘れさせる。此れが秋なのかと思うと四季を感じられる今が至極幸せで。そして何よりそれを分かち合える愛しの存在が……。
そう思った瞬間、リンと鈴の音が響くと共に風が吹き、葉が舞うのを感じれば無意識にあの夢が脳裏に浮上しフと目をあける。目の前には切なげにみえる表情で細い腕を伸ばす相手が居て、瞬間的にその腕を取らなければ何所か遠くへ行ってしまうのではないかと焦燥にかられる。そして、ほぼ無意識に一歩大きく踏み出せばその手を指を絡めるようにして取って。ふわりと互いの距離が縮まり、繋ぐ手から感じる相手のぬくもりに安堵するも己の取った行動に自分自身戸惑ってしまい、照れ隠しも相まってすっと目を逸らし
……あ、…悪い。…おはよう。……モミジ、付いてるぞ
(朝の一声のように低く歯切れ悪く言いながら空いている手で自身の首の後ろに触れ目線を落とす。しかし相手の艶やかな白髪にとまる赤の葉に気付けばその美しさにフッと微笑みが零れ、そっと手を伸ばしモミジを手に取ると相手の顔の前に持って来て
綺麗だな。…あんたは冬だが桜も紅葉も似合う。
………柊、朝から走りでもしたのか?……まだ病み上がりだろ
(つい先刻の照れなど忘れ相手の瞳を見て穏やかな声色で言うが、相手の額に滲む僅かな汗と少し乱れた着物に眉を寄せやや厳しい口調に変えて。それでも手は相手の着物を優しく正し、己手の羽織を相手の肩にかけていて
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