柊 2014-06-16 01:29:42 |
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>物乃芽
っ、物、乃芽さ、ん―――もの、のめさんっ、物乃芽さんっ
(真っ暗なそこで、柊は両手で目を覆い崩れるように地面に膝をつけると、その場で静かに泣き出した。愛しい人が消えてしまった、この気持ちをどう埋めろというのか。溢れる涙は留まることを知らず、しかしふと聞こえてきた自身の名を呼ぶ声にハッとして顔を上げる。それは聞き間違えることなどない、大好きな彼の声で。縋るように彼の名前を呼べば、瞬間パッと目を開けてようやく柊は目を覚ました。吹き出る汗に、目の端からは涙が頬を伝う。すっかりベタついて所々頬に張り付く白い髪も、しかし今の柊にはどれも関係無かった。目の前に彼がいる、消えたと思った彼がいる。今までのそれがようやく夢だということに気づくと、瞬間物乃芽を確かめるように彼の名を呼びながらギュッと抱きしめて)
消えて、しまわれたと。貴方が消えてっ、黒い影が物乃芽さんを攫ってゆくのです。
私を置いて、貴方はどんどん消えてしまわれた。私はっ、私は――――っ、ゴホッ、ッン、ハァ
(それから勢い任せに上記を述べると、物乃芽を抱きしめる手はいつの間にかカタカタと震えていた。そしていつぞやのように、柊が寝る敷布団、それから今もなお握り締めている物乃芽の着物の裾。それら全てがピシピシと凍りついていき、辺りは一瞬で冷気を纏うようになる。この時点で既に、柊は恐ろしさで正常な判断ができずにいた。自身の冷気が如何に相手にとって辛いかを、そして近くで見守っていたシラタマまでもが物乃芽の影に隠れるようにして怯えていた)
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