主 2014-06-09 21:58:16 |
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>九苑
月の満ち欠けがあるからこそ其処に魅せられるのかもしれぬ。欠けた月は時折、高ぶる心を静める故に
(月に酔うことも悪くないが、酔えるのも其れが有ったり無かったりするからで其れに伴い人の情の波を誘う月はやはり風流だと、物憂げに言い。相手の儚くも取れる溜息に気付いたが深くは問わず黙って月を見上げ。己の言葉を賞されれば小さく首を横に振り「私の言葉など唯の虚言。…優美な物があり、こなたの雅な心があるからこそ、意味を成す。人の力無くして言葉は生まれぬものだ」静かに述べれば一つ一つの仕草が優艶で目を誘う相手を僅かに顔を上げ見やれば、次ぐ問いに「こなたと語るるとは喜ばしきこと。このようにして話すのは稀に故、何を語らうか。…そうだな、此方は外に出たいとは思わぬのか?」相手は幼き頃から此処にいて、己もまた長年連れ添ってきたかに思うがこうして二人で話すことは滅多になく、嬉しく思うのにいざ話すとなると話題が浮かばない。神妙に膝の上に置く地本を眺めていると其の中の世を描いた童話が脳裏を掠め、殆ど籠もりっきりの相手の外への関心はいかほどのものかと。他の月人に比べ行動範囲が広い故に気になり、外と内を隔てる壁をぼんやり見ては尋ねて。
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