きみを愛しても良いですか＿＿　　[ml]

…え？いいのか？

(彼がそっと持ってきてくれたものは寝具用具であった。やはり床で寝られるのは多少抵抗があるのだろうか。目を丸くしつつ布団を見つめていると、彼が自分の前でしゃがみ込み耳元でそっと言葉を告げる。『...ッ、…分かった、有り難う』彼の落ち着く声と共に出された吐息がいたずらっぽく耳を擽る。多少身を捩らせつつも彼に向かい感謝の意を伝える。と、彼はさっさとベッドに横になってしまった。今度こそ顔が見られない体位で。心の中でもう一度有り難う、と告げれば彼の香りがする布団にくるまり朝を待った)

ん...ッ。

（昨晩自分はあの侭睡魔に任せ寝てしまったのだが窓のカーテンを閉めるのを忘れていたのか寝返りを打った自分の顔の朝日の光が照らされるではないか、自分は低血圧な故に小さな唸り声をあげてはシーツを手探りで手繰り寄せれば顔を隠すようにシーツに顔を埋め隠せば必死で起きぬように目覚めというものから逃れるように吐息交じりに何度も唸り声を上げればまた小さな睡魔の波が押し寄せればうとうととした状態でただ寝そべり

う…ん…。...寒っ。

(室内で夜を明かすのは久しぶりであった。心地よい鳥の声と体を通る冷たい空気に目を覚ませば思わず感想を口にしてしまう。一瞬自分が何処にいるのか理解できずゆったりとした動きで辺りを見回すもすぐに彼の部屋だ、と理解する。欠伸や伸びを交えつつ上半身だけ起こすとカーテンの隙間から漏れる朝日に顔をしかめる。ふと彼が眠って居るであろうキングサイズの大きなベッドの方向を見れば彼もまた朝日が睡眠の邪魔をするようでシーツで顔を隠している。猫みたいだな、なんて小さく笑みを漏らすも体が耐えきれなくなったのか嚔をしてしまう)

あぁ...ん。

（体を丸めようと必死に体を動かしたりするが先ほどの朝日のおかげで半分も冷めた睡魔、仕方なしに重たい瞼がゆっくりと上がればかすかにぼやける視界。ゆっくりとだるい上半身を起こす際に吐息交じりに掠れた声を零せば隣の丸い小さなテーブルの上に置いてある眼鏡を探るように腕を伸ばし辺りを探ればフレームに指先が当たればフレームをつかみ眼鏡をかければクリアになる視界に吐息をはいてしまうのは寝起きで仕方がないこと。ふあ、と大きな欠伸を零しながらふと彼が寝ていた場所へと視線を向ければ彼は既に起きていたではないか「...はよう、ございます...。」と掠れた声で呟けば口角を緩め何処か穏やかな笑みを浮かべればまたその場に寝そべってしまう。

ふぁ…。ん、おはよ。

(しっかりと寝癖が付いてしまった髪を掻きつつ大きな欠伸をすれば彼も目を覚まし眼鏡をかける。眼鏡でこんなに印象が変わるものか、と疑ってしまうほど彼の表情は大人びて見えた。と、そこで彼が穏やかに微笑みつつ朝の挨拶を交わしてくる。初めて見た彼の柔らかい表情に思わず息が詰まってしまいそうになる。それでも平然を装い挨拶を返すと彼が又寝そうになっているので寝起き悪っ、なんて考えつつ彼の近くまで寄り『お-い、起きろって。朝ですよ-』なんて体を揺さぶってみる)

ん"っ...や、だ。

（またふわふわとした睡魔が押し寄せる中体を揺さぶる彼に眉間に軽く皺を寄せながら薄らと瞳を開けては彼を見上げれば揺さぶる腕を掴みぐい、と此方へと引っ張りベットへとまぎ沿いにすれば彼の方に体を寄せては鎖骨辺りに顔を埋めてしまう、暖かい体温が交じり合う感覚に心地よいのかくすり、と小さな笑みをこぼしてしまえば彼に身を寄せ密着した状態、彼に迷惑だが人肌が心地よいために離れたくはないと感じれば彼の衣服を握り締めてしまう

やだじゃねぇ…ぅうあ？！

(彼がうっすらと目を開け、呟いた言葉にわざとらしく腕を組みながら言おうとするも腕を引っ張られ巻き添えにされてしまう。何が起こったのか理解できないまま思わず変な声を出してしまえば鎖骨辺りに顔を埋めてくる彼に少しずつ現状が理解できるようになってくる。寝ぼけているのだろうか、彼はくすりと笑みをこぼすと自分に抱きついてくる。鼻孔を擽る彼の香りとしっかりとした体付きが感じ取れ脳がやられてしまいそうになり目の前が一瞬眩む。最初は逃げようともがくも出られそうにない。段々と暖かさが浸食してくる。ああ、俺…此の儘でも良いかも…)

……ん。

(ようやく大人しくなる彼に満足した様に息を吐けば片手で隣に丸め置いた毛布を広げ彼と自分にかければ心地よげに目尻を細めれば自分は彼への警戒心が薄くなっているなとふと内心で思えば更に彼に身を寄せようと体をもぞもぞと動かせば鎖骨から首筋に顔を寄せ埋めればふと扉がノックされる音に食事を置いていく。と言う声に返事をするかのように唸り声を小さく上げれば起き上がるのに未だに抵抗があり

ってめえ！起きてるな？

(寝ぼけていると思っていたがどうやら違うよう。彼は彼のの意識を持ち自分の考えで行動している。ゆらゆらと揺れ気味だった己の意識をはっとさせ彼から逃れようと身を捩らせる。意外に彼は力が強く、逃走人生で培ってきた筋肉も役に立ちそうにない。と、彼が鎖骨から首筋に顔を埋める位置を変える。『ひッ…あ…擽った…いぃ』彼のウルフカットの髪が鎖骨から首筋までをいたずらっぽく擽り、つい声が出てしまう。ハッとして口を紡ぐと、扉の外からは執事であろう者の声。『ほら、朝飯出来たって。起きろよ坊ちゃん』彼から逃れようと彼を揺さぶりつつ)

......あ”ぁ、面倒臭い。

（起きているなと言われては返事の代わりにふっ、と鼻先から小さな笑みを零してしまう。体を揺さぶる彼に仕方なしに彼を離しゆっくりと上半身を起こせば軽く乱れた上半身の衣服を整えながらやっとの思いでベットから起き上がれば扉の元へ、がちゃりと扉を開けば其処にはフルーツ等朝食にふさわしい料理ばかりが並べてあり自分はこんなにも食べないのにな、と思いながら部屋の中へと運べばさっさと扉を閉め大きめなソファーの前に置いてあるテーブルへと適当に並べ置けば「...貴方の名前、改めて教えてくれると嬉しい。」実際ネットでみたが何故だろう、彼と関わりたいと思ったのか彼の口から聞きたいのかぽつり、と呟けば彼を見つめ。

…一ノ瀬和樹。お前は？

(彼がやっと離れほっと一息吐きながらこちらも衣服を整える。此から彼が起きるときは注意しよう、なんて考えつついざこざが有ったせいでもっと酷くなった寝癖付きの髪を手ぐしで軽く解す。彼が扉の外から持ってきた朝食はフルーツ等が見るからに豪華そうな皿に丁寧にもってあった。自分が食べていた食事とは当たり前だが全然違う、と目を丸くする。此が坊ちゃんってもんか。と、そこで彼から問いが掛かる。そう言えば名前知らなかったな、なんて思い出しながら隠すことなく自分の名を答える。彼を無意識の内に信頼していたのかも知れない。彼の名前が知りたい)

俺は国代夜舞…。

(ふふ、と穏やかな小さな笑みを溢せば彼が名前を聞いたので素直に名前を言うがまた金目的の関わりか其か避けられるのか、と思うと寂しげな笑みを口許に浮かべてしまう。自分のカップに珈琲を注げば小さく切られている林檎を片手にソファーに腰を下ろせば淡々と食べては珈琲を飲み

国代夜舞…良い名前じゃねぇか。

(彼の名前を知ることが出来れば嬉しそうに顔を綻ばせ思った本音を口にする。だが彼は寂しげな笑顔を向けた。盗賊と関わるのはやはり気が引けるのだろうか。そう考えすごすごと笑顔を引っ込め彼と少し離れた所に座り直すも彼がソファーに腰を下ろし林檎を口にしたので自分も食べたい、なんて考えソファーに座っている彼の膝の上に座れば彼が食べた反対側から林檎をかじりシャクシャクと軽快な音を立て『ん、旨い』なんて笑ってみる)

………!??!。

(自分の膝の上に座り反対側から食べる彼に一時停止したように動きを止めてはやっと数分後思考が戻ったのかかああ、と顔を赤く染めれば思わず食べていた林檎を離しそうになるが片手でなんとか持ち支えれば「な、なな…な、にしてるですか?」と裏返った声で呟けば膝の上に座る彼を呆然とした様子で見詰めれば赤い顔を隠すように顔を逸らし

はは。国代、照れてる。可愛い。

(驚いたように目を見開く彼にからかうように笑い首筋に抱きつけば何していると言う彼の問いにふふっと笑みをこぼし『さっきのお返し』なんて首筋を軽くなめてみる。それから首筋から彼の背中に腕を回してきつく抱きしめると『なぁ…俺、お前の事好きだわ』と真面目な表情でさらりと言い放つ)

え、えっと…あ、あの。

(顔を赤く染めた侭なんて呟けば顔を逸らした侭何故こうなったと思わず考えてしまうが仕返しと言われては納得してしまう、首筋を舐められてはん、と未知なる感覚に思わず声をあげてしまう、彼の言葉に目を見開いてしまえば悲しげな表情で「…俺は貴方を好きになれない…俺にはもう見合いが決まっているんだよ」と小さく呟けば俯いてしまう

ん。まあ、何となくそんな感じはしてた。

(彼の反応に嬉しそうに笑うも寂しそうな彼の口からこぼれた言葉に一瞬目を見開く。暫く経ちふぅっと短い溜息を吐くと渋々と言った様子で彼の膝から降りる。又元居た彼の座っているソファーの少し離れた場所に移動すれば『俺は諦めないぜ。絶対俺に惚れさせてやるよ』なんて相手を指さし何処か不敵な笑顔を見せる)

しかも…あまり関わりはないですよ?。

(いきなり好きと言われても自分にはその感情が分からない、極度に他人との関わりを拒んできたのだ戸惑った様に言葉を次げば離れていく温もりに寂しさを無意識に感じてしまう、彼の言葉に返事する変わりに口許を穏やかに緩めれば笑みを浮かべて

んなもん…関わってきゃあ分かるだろ。

(何か彼には特別な事情があるに違いない。それでも自分がその立場であったら好きな人とは事情を跳ね退けても愛し合うことを約束できる。だがきっと彼は自分とは違う世界に生きている。何やかんや口出しできる義理は無い。そう考えると不敵な笑みから寂しげな笑みに変わり少し俯きがち)

………夜舞です。夜舞って呼んで欲しい。

(ふと先程彼は自分の事を国代っと呼んでいた、ぽつりと内心の気持ちを呟いてしまえば顔を微かに赤く染めれば其を誤魔化すように珈琲を呑んではもう一切れの人参を食べはじめ