みをな「かんなーっ! 麻奈ーっ!」
かんな「あ、みをなー! 志音!」
志音「今日はみんな早いね? どしたん?」
かんな「麻奈は彼氏君と飼育当番やって―! あ、そんで、かんなは応援団の集まり! 今日な、応援団長決めんねん!」
みをな「うちは、たまたま起きんのが早かってん。 志音は……いつもの事かぁ!」
みんな「あはは」
ピンポンパンポーン 飼育当番の人ー、応援団の人ー、6年で図工終わらせてない人ー、当てはまる人はやることを
しっかりとこなしてください」
かんな「うわっ、やっべ! はよ行こ! ……って、麻奈さん麻奈さん!天斗君ですよ~。 行っておいで~!」
校門の前で友達と話をしている男子を指さしながら私が言った。
麻奈「も、もう、かんなのバカ!」
かんな「お?お?お?、顔が赤いですよ麻奈さん!」
さっき言った麻奈の彼氏というのは天斗君の事だ。
2人は両想いだったらしく、付き合い始めると、バレンタイン、ホワイトデー、クリスマス、お正月、夏祭りは、必ず盛り上がっている。
麻奈「って、ほんまに時間無いで! はよ行こー!」
かんな「うわっ!いっそげー!」
みをな&志音「きゃはは! 言ってらしゃ―い」
―――私たちはこんなに仲が良かったのに、一体何が私たちの仲を引き裂いたのだろう。―――
その日の放課後―――
私はその日、志音と芽衣華とみをなの4人で、公園で遊んでいた。
みをな「あ、いっけなーい。 BCゲーム忘れてきちゃった。 今から取りに帰るから待っといてな」
かんな「またー!? みをなって、いつもやん! どんくさいなぁ」
みをな「んじゃ、取りに行ってくるから待っといて。」
かんな「ばーいばーい」
そして、みをなが見えなくなった時。
志音「かんなー」
かんな「なんやー?」
志音「ちょっと、話がある」
(志音が真顔で言うなんて珍しい)
志音「あのな、あんたってみをなの事好き?」
(いきなり何言いだすんやろ)
かんな「うーん、まぁ好き?」
私とみをなは、2年生からの親友で6年生になってもずーっと友達。
プリクラとったり、おそろいのポーチ買ったり、年賀状送りあいしたり……。
それにクリスマス会、誕生日会の常連だ。
志音「そいじゃぁ、質問変えてっとあんたはみをなの悪口言ったことある?」
かんな「う~ん……ないねぇ」
志音「んじゃ、みをなに悪口を言われてたら許す?」
かんな「うーん、……お、怒る? かな?」
芽衣華「あのね、芽衣華ね、みをなが志音とかんなの悪口言ってたの聞いちゃったの」
今から2か月前――――
みをな「なんかさぁ、あいつうざくね?」
だれか「え? だれだれ?」
みをな「かんなだよ! か・ん・な!」
芽衣華(えっ? みをなとかんなって仲良かったんじゃなかった?)
みをな「なんかぁー、あいつさぁー、すんげー、オーバーリアクションじゃん? あれむかつくしぃ~。
あれさぁ~絶対さぁ、男子の前でやってるよ~。 あれマジでキモイ~」
芽衣華(みをなホンキで言ってんの!?)
みをなみをな「それに、志音もさぁ~自分の意見の通りにならないとすぐキレるじゃん? あれも、超うざいしぃ?」
芽衣華(えっ! ゆ、許せない……)
芽衣華「ちょっとみをな!? あんた友達でしょ! 悪口なんて言って楽しいの? あんたなんて、さいて……」
みをな「うるさいなぁ、どう言おうとうちの勝手だしぃ? 勝手にいい子ぶってろよ、優等生ちゃん?」
芽衣華「っー!?」
みをな「あ、あとチクったらシバクからね?」
そう言って、みをなは違う女子と悪口の続きを続けた。
――――――――
志音「ね、ね、むかつくでしょう? ほんとに何様よっー! かんなは明るいキャラだからオーバーリアクションじゃないし……
うちも、正しいこと言ってんのにあいつが認めないから!! それに……」
かんな「なんで? うそ……」
どうして?
ワタシハ、アナタノコトガ、ダイスキデ……。 ナノニ、アナタニトッテハ、ドウデモイイヤツ、ダッタノ?
イママデ、アナタニ、ツクシテアゲタノニ、ミンナニキラワレテモ、アナタヲマモッタノニ……。
ナンデ?ナンデ?ナンデ?ナンデ?ナンデ?ナンデ?ナンデ?―――――
志音「か、かんな!? なんで泣いて……」
気が付くと私は泣いていた。
誰かが、「悲しいことがあれば泣けば悲しさが薄れる……」とか言っていた。
シクシク、と泣いてみた。
ダメだ……。 こんなんじゃダメだ。
かんな「うわぁぁぁぁ~、あぁぁ~うぅっ、わぁ~ん」
子供みたいに大きな声で泣いてみた。
でも、ただ惨めな気持ちになっただけである。
しかし、もう止められない。
野次馬たちがこっちを見て、ケータイでムービーを取っている。
それを、必死で志音たちが追い払っている。
私の中にあった、みをなへの友情は音を立てて崩れ落ちた。
友情っていうのは少しずつ積み重ねてやっと出来るんだ。
しかし、壊れるのはこんなにもあっけない――それを初めて知った。
志音「ほんとにもう大丈夫?」
かんな「うん……志音ありがとう」
志音「私さっきから考えてたんだけど……」
かんな「いじめようよ……」
志音「えっ? 今なんて?」
かんな「だから、みをなをいじめようって言ったのよ」
しばらく沈黙が流れる。
志音「良いんじゃない?」
志音が口を開いた。
志音「そんなの、当然の報いよ。 あんな奴苦しめばいい」
わたしは微笑んでからこう言った。
かんな「明日からね……」
なにも知らないみをなが、教室に入ってきた。
みをな「みんなー、おっはよ~!」
シーン……―――――――。
みをな「あ、あれ? も、もう一回おっはよ~う!!」
ポト……
みをなの背中に丸められた紙が投げられた。
みをながその紙を拾い上げて広げる。
そこには、
「**! 消えろ! 勘違いブス! バカ! とっとと失せろ!」
と、書いている。
それを見たみをなは半分泣きそうになりながらこっちを見ている。
みをな「これ、ドッキリ……だ、よね? ねぇ? かんな――――」
かんな「うるさい」
みをな「え?」
かんな「うるさいって言ってんだよ!」
私は、近くにあった、みをなの机を怒りにまかせて蹴った。
バァンっ!!
みをな「ひっ!」
すっかり怯えた顔をした、みをなの顔に満足した私は心の中でほくそ笑んだ。
しかし、これだけじゃ終わらない。
かんな「私の、オーバーリアクションうざいんでしょ? なら、とっとと消えちゃって?」
みをな「かんな、ち、違うの、あ、あれは―――」
かんな「言い訳なんてしてんじゃねーよ!」
私のイライラはピークを達した。
そして、みをなの頭にかかと落としを食らわせた。
パコンっ
心地よい音が教室に響いた。
………………………
みをな「い、いや……、だ、だれかやめて……、だ、だれか……」
もう1ッ発、蹴りを食らわせてやろうとした瞬間、
麻奈「やべ、表先生来たよ!」
かんな「くそっ! 絶対ちくるんじゃないぞ!?」
みをな「は、はい……」
かんな「ふんっ!」
そう言うと私は席に着いた。
――――――――――
百合子「あ、あのねちょっといいかな?」
放課後、私の席に1人の女の子が来て声をかけた。
かんな「ん、あなたは確か……百合子ちゃんよね、どうしたの?」
百合子「みをなちゃんを、いじめてるってホント?」
かんな「そうだけど、あ、これは6年全体の秘密だからチクったらダメだよ?」
百合子「そうじゃなくて、私あの子に「百合子の髪型可愛いね」って、言ってもらって嬉しかったの。
だけど、この前ある人と私の悪口言ってたみたいで……」
みをな「百合子って、顔まんまるじゃん? あの顔にボブって似合わね~。」
百合子「って、言ってたの。 すごくショックで……、私、そんなにブスかなぁ?」
百合子は目に涙をためながら聞いてきた。
かんな「ううん、今までクラスが違うから声を掛ける機会がなかったけど、児童会の発表の時、可愛いなぁと思ってたし」
百合子ちゃんは確か児童会の代表で会長さんをやっていたはずだ。
それに、さっきの可愛いと思ったのは本音だ。
百合子「じゃぁ、私もいじめグループに入っていいかなぁ?」
かんな「もちろん、大歓迎よ!」
私が百合子ちゃんと、しばらく話していると、いつのまにか志音、麻奈、芽衣華、天斗、が立っていた。
芽衣華「なに話してたのぉ? 芽衣華たちはねぇみをなをいじめる方法を考えてたんだぁ」
かんな「へぇ~、どんなの?」
かんなは返事しながら、芽衣華ってこんなしゃべり方だっけ?と、思った。
すると、それを察した芽衣華はかんなの方を見て話してくれた。
芽衣華「わたしねぇ、今までいい子ちゃんしてたけど、もうめんどくさいしぃ?
やめちゃおうかなーってかんじぃ? アハハハ!」
かんな「なるほど……、っで、なんか良い方法思いついた?」
志音「それが、ぜんっぜん」
志音が頭を抱えている。
芽衣華「あの、私を意見で良いなら……いい案があるよ」
志音「どんなの? って、あなた百合子じゃん! もう、かんなと仲良くなったの?」
百合子「うん! で、その案がね、みをな以外の人に、みをなにやられた嫌な事、直してほしいことを紙に書いてもらって、
それを、段ボール箱に入れるの!
それを1日に1枚引いてみをなに「もうしません」って、改心させるの! どう?……」
百合子の話を聞いていた天斗が「お前、天才だろ……」と、言っていた。
志音「そいじゃ、明日からね! 放課後じゃないと先生に感付かれるかもしれないし……」
天斗「OK! んじゃ、その改心させるための場所と、人数は、っと」
芽衣華「それは、その紙を書いた人とここに居る人でいいんじゃない?」
みんな「そいじゃ、また明日!」
みんなは遠足の前日みたいにワクワクして帰っていた。
かんな「それでは、第1号、いっきまーす!」
ガサゴソ、ガサゴソ。
昨日の事――――
私達がメールを送ったところ、なんと6、70件ものみをなへの苦情が集まった。
そして、その日の放課後「みをなの改心の会」を行っている。
場所は町の外れの廃墟を選んだ。
ここなら誰も来ないはずだ。
私達が今いる廃墟は元はライブハウスであったが、そこの大型ライトに人が挟まれて死んでしまった……と、言う
事件が起きて取り壊すことになったのだ。
そして、 その中にあるステージに、かんな、みをな、志音が立っていて、西出口には芽衣華が、メイン出入口には天斗が立っている。
ふっ、とみをなと私の視線がぶつかった。
みをな(もう、やめて! 謝るから! おねがい。)
みをなが目で訴えてくるので、私も目で返事してやった。
かんな(だれも裏切り者の味方なんてしてくれないのよ? あなたは、そこで罰を受けることしかできないのよ! まぁ、せいぜい楽しみなさい?)
その言葉が、みをなに伝わったらしく泣きそうな顔をしている。
そして、私は適当に紙を掴んだ。
その紙に書いていた名前は6年1組の三河 菜々可だ。
私が顔を上げて皆の顔を見合わせると、今までざわついていた人達がシーン……と、なった。
かんな「では、今から今日の人を発表します。 三河 菜々可さん、三河 菜々可さん!」
私が目で菜々可を探した。
すると、健康的に日焼けした手が、ステージの前で上がった。
かんな「では、三河さんステージに上がってきてください」
そして、ステージに上がってきた菜々可は息を整えてから、みをなの方を睨み付けて、自分がされたことを語った。
菜々可「私は、みをなが、朝から調子が悪そうだったから「どうしたの?」って、声をかけたら「うるさい」って言われて蹴られた。
後から聞いた話では、親と喧嘩したから、ムカついてただけ、って言って謝らないし……、あんたの蹴りすごく痛いのよ!」
周りの奴「うわ、八つ当たりとかサイテー。」 「まじで、キモいわ~!」
かんな「では、みをなさんそれはホントの事ですか?」
みをな「ちがう、そんなこと、してない……、おねがい、もうやめ……」
菜々可「言い訳なんてしてんじゃねーよ! 勘違い女!」
そう言うと菜々可はみをなを蹴り飛ばした。
菜々可「わたしの痛みを思い知れー!」
菜々可が蹴りを入れる度、皆が「もっとやれー!」「骨折っちまえー!」と言っている。
壁にかけている時計が5時を知らせる。
かんな「それでは、今日はもう解散でーす。」
私が言うと、みんなが残念がりながら会場を後にした。
最後の1人が会場を出ると、みをなと改心の会実行委員会の芽衣華、麻奈、志音、天斗、かんなが残った。
百合子は、と言うと囮に使うことにしたので、ここには居ない。
囮、というのは、いじめられて友達が居なくなり、1人になったみをなを、かばうお友達のふりをしてみをなを陥れる、と言うことだ。
そして、みんなが居なくなってひと段落ついたとき、百合子が会場に駆け込んできた。
よし、計画通り……。
百合子「みんな、なにしてんの?」
菜々可に蹴られて涙でグショグショに濡れた顔のみをなを見ていった。
麻奈「百合子ちゃん? あなたは何にも知らないのかな? じゃぁ、教えてあげる。
良い事と悪い事の区別のつかない、みをなちゃんにお勉強会をしてるの!」
しかし、みをなを見て百合子は言った。
百合子「これのどこがお勉強会? ふざけちゃだめだよ。 行こう、みをなちゃん」
みをな「え、あの……」
戸惑う、みをなの手を引いて百合子は会場から出て行った。
かんな「おまえらぁっ! おぼえてろよっ!?」
そして、百合子たちの姿が見えなくなるとニヤッとかんなが笑った。
かんな(さぁて、どうなるのかしら?)
みをな「待って、百合子ちゃん!」
百合子「なに、みをなちゃん?」
みをな「さっきから歩くか走るしかしてないじゃん? どこに向かってるの?」
百合子「決まってるじゃない、学校の先生に言いに行くのよ! あんなこと許して言い訳――――」
みをな「もう、いいの。 私があの子達を裏切ったから……」
百合子「でも、それでいじめられていいなんて事、ないんだから……みんなに言うのが嫌なのなら……何の力にもなれないけど、
わたしにそうだんしてきな!」
その言葉でみをなの涙腺と、言うダムが決壊した。
みをな「あぁ、ありがとぉう、 わぁ、わたしわぁ、こんなにぃ、やさしくしてもらっちゃぁ、だめなにんげんなのにぃー」
百合子「よしよし、もういいんだよ? 泣かなくたって……」
そんな優しい言葉をかけてくれた百合子が裏切っているなんて、みをなは夢にも思わなかった。
メール
百合子(かんなへ、 うまくいったよwww もう、楽勝!
あいつの泣き顔マジうけるし)
かんな(ゆりこへ、 もうすっかり百合子も悪人だなwww)
百合子(だな……笑い!)
ぱたん――
ケータイを閉じたかんなは1人あざ笑っていた。
(私の事をあんなにしといて、地獄を思い知れ!)
そんなことを考えていると家の戸が乱暴な音を立てて開いた。
お姉ちゃん「かんなぁ、おっかえりぃ~!」
かんな「あっはは、 ただいま~!……でしょ! と、言うよりも珍しいね? こんな時間に帰ってくるなんて」
お姉ちゃん「それはねぇ、彼氏君連れて来ちゃいました!」
かんな「えっ!? ねぇちゃんの彼氏!? 見たいみたい! 今すぐ降りるから待っといて!」
そう言うと、私は読みかけの本を放り出してドレッサーの前に立って全身をチェックした。
そして、チェックが終わると急いで1階に降りた。
そしてダイニングに行くと、お姉ちゃんとお友達の女の子が2人、男の子が3人ソファーに座って話をしている。
かんな「こんにちわ~!!」
お姉ちゃん「私の大好きな妹ちゃんよ~! みんなを紹介するわね?
えーっと、そこのソファーで寝っ転がってる奴が大河、そんで横のお姫様みたいな女の子が梅子ちゃん! 2人って出来ちゃってんのよね!」
お姉ちゃんが勝手にベラベラ、と喋るので大河君が怒った。
大河「な、お前! 妹に勝手に紹介してんじゃねえよ!」
お姉ちゃん「でも、出来てんのはホントじゃんか!」
お姉ちゃんも反撃した。
すると、今まで黙っていた梅子ちゃんが喋った。
梅子「ホントのこと言われたら反撃できないもんねぇ」
大河「梅子まで! は、恥ずかしいだろ!?」
そう言いながら、くすぐり合いっこをする2人をお姉ちゃんは、呆れた……と、言った顔をして他の人を紹介してくれた。
お姉ちゃん「そこで音楽を聴いてるのが秋博! んで今、お茶飲んでるのがマリア。 ハーフなんだよ! すごいよね~!」
かんな(あ、ハーフなんだ。 だからあんなに綺麗なんだね……)
マリア「んで、私たちもできてますから……」
かんな(うわ、声まで綺麗だなぁ……)
お姉ちゃん「んで、もうすぐ来る奴が―ー」
ピンポーン
お姉ちゃん「あ、来たかも! かんな、開けて来て」
かんな「はーい」
かんな「どちら様でしょうか?」
正博「あのー、もしかして、かんなちゃん?」
かんな「あ、そうですけど……」
正博「やっぱり! 香枝(姉ちゃんの名前)から聞いてたんだ!
あ、俺正博って言って、香枝の彼氏です! よろしくです!」
かんな「こちらこそ、よろしくね! さぁさ、早く上がって。 暑いでしょ?」
正博「あ、んじゃお邪魔しまーす!」
かんな(そっか、お姉ちゃんにもついに彼氏ができたかぁ~! いいなぁ。
正博君、顔もいいしメガネ男子って萌え~?)
そんなことを考えながら、かんなは玄関の扉を閉めた。
そして、しばらく皆で雑談してマリアちゃんと梅子ちゃん、大河君と秋博君は帰って行った。
かんな「そういえば、どうして正博君とお姉ちゃんって仲良くなったんだ?」
私が何気に聞いてみると、お姉ちゃんはニヤニヤしながら正博君の方を意味深に見た。
私も、つい反射的に正博君の方を見ると彼は顔を真っ赤にしてこっちを睨んできた。
正博「おま、なんちゅう事聞くんや!」
お姉ちゃん「まぁ、正博が言わんのやったらうちが言ったろう。
この人な、モテるねんけど恋愛とかは全然、興味が無かったらしいねんな。
けど、うちがこいつが溺てたのを、人工呼吸して、お姫様抱っこして保健室に連れてってあげたら
うちの事を今まで馬鹿にしてたのに、その事があってから、ちょくちょく優しくしてくれて……。
んで、うちが告ったら「マジ!? 俺も好きです……。」
……的な? 感じかな」
かんな「ふーん、いいねぇ。 青春エンジョイ!!」
お姉ちゃん「あはは、おもろいなぁ」
その時、家に飾っている振り子時計がボーンボーンと9回なった。
えっ? もう9時ジャン!!
かんな「あれ!? 正博君、もう帰んなくて良いの?」
すると、お姉ちゃんが、「あぁ、かんなに言って無かったっけ? 今日、正博うちに泊まるからね」
かんな「…………えぇ~っ! あの純情少女! 立花 香枝殿が!?」
お姉ちゃん「あ、あのねぇ、すぐエッチな方に持って行かない!! ただ単に、親と喧嘩して、家出しただけだから!
秋博君もマリアちゃんの家に泊まるらしいよ」
かんな「あら、そうなのね」
お姉ちゃん「なによ!? そんながっかりした顔して! まぁ、今日は姉ちゃんと正博で由紀子の部屋で寝るから!!」
かんな「うぃ~。 サヨナラ、お姉ちゃん、おやすみ、おねえちゃん」
お姉ちゃん「おやすみ~」
パタン――
ダイニングの扉を閉めたかんなの心の中は幸せで溢れていた。
優しいお姉ちゃんに、もし結婚したら正博君が義理兄ちゃんになって……
ワクワクするね!
親は家出しちゃってお姉ちゃんと2人暮らしだったけど、お姉ちゃんのおかげで不自由な事は、1つも無かった。
それに、今は正博君も居るし。
志音や麻奈も居て、百合子、芽衣華に……、そうだ! みをな1人を敵に回したことによって、学年全員が友達になったようなもんだ。
――ありがとう、みをな――
あなたの行動には不愉快な点もあったけど、結果的に良かったし、
――明日はどうやって遊んでやろうかしら?――
かんなはその日の夜、なかなか寝付けなかった。
――朝――
いつも寝起きが悪いかんなも、今日は珍しく早起きだ。
(だって、今日から新しい遊びがあるもんね!)
お姉ちゃんに買ってもらったビビットピンクのTシャツに、2の腕丈のピンクのリボンが付いた黒のアームウォーマー、
黒の短パンにピンクと黒のサイハイソックス。
全身が写せる鏡の前に立って、全身チェック。
よし、今日はOK♪
かんなは階段を下りながらお姉ちゃんの名前を呼んだ。
「お姉ちゃんおはよー!」
「あれ? かんな、今日は早いわね」
「うん、今日は早く起きた!」
「おはよう、かんなちゃん」
「あ、正博君。 おはよ~」
「わぁお! 今日のご飯もおいしそー! いっただきま~す!」
「いただきます」
「今日もおいしーね!」
「って、もうこんな時間!? じゃ、行ってきます!」
「行ってらっしゃ~い」
私は麻奈と一緒に登校してるから待ち合わせ場所に急いだ。
「おっはよ~麻奈!!」
「おっはよ~、かんな!」
「あ、天斗も居るじゃん!? どしたん?」
「いや~、今日から一緒に学校行きたいなぁ~と」
「いいよ! 一緒に行こっか?」
「もう8時!? 急がんと!!」
私が待ち合わせ場所の公園の時計を見て言うと、麻奈たちは慌てて鞄を背負い、走り出した。
「あぁん、待ってよ~!」
新しい朝の幕開けです。
教室にて―――
「おっはよー! みをなちゃん!! 学校来たんだ?」
(か、かんなだ……)
「おはよう、かんなちゃん……」
「あれ? せっかく話す価値の無い害虫に声、掛けてあげたのに、そんな態度はないんじゃないかな?」
「い、いや……そんなつもりじゃなくって……」
「また? 言い訳なんて飽きたんですけど!? 素直に認めろよ! バーカッ!」
パラパラ――
みをなの頭の上から生ごみが降ってきた。
「もう、止めて……」
みをなが半泣きの顔で言った。
(無様である!! とても無様である!!)
「いやぁだねぇ! まぁ、こんな事になったのはあんたのせいだしぃ? ざぁんねぇん!」
すると、今までためていた涙がみをなの涙腺からこぼれ落ちた。
「う、うっ、もうっ、や、やめっ、て、ってばっ、う、うわぁん」
(泣き方キモッ!)
すると、2組の教室に百合子が入ってきた。
「かんなちゃん? まだ懲りないのかな? いい加減にしなよ!
いくら裏切られたってして良い事とわ悪い事ってものがあるでしょ!?」
「もう、喧嘩はっ、や、やめっ、てよーう。 うえっ、うぐっ、ふぇ~ん」
(泣き方、超キモいッ!!)
「ふんっ! 勝手にすれば!? そんな奴、興味無いしぃ~?」
そういうフ・リ・をして、かんなは教室を出て行った。