打ち止め 2013-11-01 18:35:18 |
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(肺は大丈夫ですか?早くに帰ってこれたので投下します。)
(冷えた空気が肌を刺す。)
(その気になれば反射もできるのだけれど、やろうという気にはなれなかった。)
(今の彼は自分の事で一杯一杯で、他の事に気をかける事ができない。)
(体温が下がっていく。まだ秋だが、深夜から早朝は真冬並みの気温である。)
(布団もかぶらず、ただ上半身だけを起こしている彼の体温は、一秒ごとに着々と奪われている)
……。
(特徴的な赤い瞳で、鏡に映った自分を見る。)
(真っ白の、悪魔のような自分。)
(白と黒のモノクロの服を着て、警戒を辺りに振りまいて、自分に近づかないでくれと。それは、彼の願いだったのかもしれない。警告だったのかもしれない。)
(ここから先に、近づかないでくれ、と)
(それをあの少女は踏み越えて彼の前に現れた。)
(それが良かったことなのか、悪かったことなのか。一方通行にはついぞ判断ができなかった)
(自分の前に現れたことで、彼女の自由を奪った。彼女を生まれさせてしまった。)
(自分の前に現れたことで、自分が救われたのもまた事実。それを認識する度に、彼は優越感と、罪悪感を抱く。)
…らすとおーだー
(まるで、子供のような声だった。迷子のような声だった。)
(彼は瞼を閉じ、唇を強く噛む。)
(躊躇いは一瞬で、彼は勢いよく朝日の眩しい街中に跳び立っていった)
(出て行ってしまった彼女を連れ戻さないと云う選択肢は当たり前のように無い。あるのは、彼女が「出ていけ」と言えば出ていける、自分が出ていくと云う選択肢だった。)
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