カナリア 2013-06-26 20:48:57 |
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あれから1週間、毎日俺は母の見舞いの後に209号室へ行っていた。
毎日が楽しくて、楽しくて
心から笑えたのって・・・・何年ぶりだろう?
いや、初めてかもしれない。
本当に、この時が1番幸せだった。
今日もまた、いつものように209号室に来ていた。
最初は敬語だったが、同い年だということを思い出し、
今ではタメ語だ。
「なぁ、美雪はどこの学校に通ってたんだ?」
「え・・・?」
「だって、入退院を繰り返してるんだろ?だったら1回くらい・・・
学校に行ったことあるんじゃないかと思ってさ。」
「・・・えぇ。あるわよ。どこの学校って・・・あなた本当に分からないの?」
「?・・分かるわけないじゃん。美雪とは病院でしか会ったことないんだし。」
「・・・あなたって周りの人とかに感心0でしょ?」
え?どうして分かったんだんだ・・・?てか、何で今の話からそんな考えになるんだ?
確かに俺は周り(他人)なんてどーでも良いと思ってるし、
それはもう、自分の学校の生徒会長の顔さえ出てこないほどだ。
でも、ここは本当の事を言うべきではないな。
そう考えた俺は、笑顔を作り、
「そんなわけないじゃん。ちゃんと、周りの人のことも見てるよ。」
「・・・・・嘘。」
「え?」
「信二君がそういう笑い方するときは絶対嘘ついてる。1週間も信二君見てたら、
それぐらい分かるわ。」
俺は嘘をつくのが上手い。
なんせ、17年間俺を育ててきた母・・・あの女でさえ俺の嘘に気づいた事なんてない。
信じてばかりだ。
なのに美雪は・・・1週間だけで・・・
「・・・やっぱすごいな。お前。”1週間も”じゃなくて1週間”だけ”で俺の事分かっちゃうんだな。」
「・・・私にとっては”1週間も”なのよ。」
「・・・?」
「1週間は・・・短いようで長いの。
1週間を短く感じる人は、毎日が楽しいと感じながら生きている人。
1週間が長く感じる人は・・・毎日をつまらなく生きてる人。」
そう話している彼女の目は・・・
出会ったときと同じ・・・漆黒だった。
彼女にとって”1週間も”ってことは・・・
「俺といるのは・・・つまらない?」
「ううん。違うの。信二君といる時間はとても幸せよ。だけど・・・」
「だけど・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・」
美雪は黙ってしまった。
俺は「だけど」の先が聞きたい気持ちと
聞くのが怖いという不思議な気持ちになった。
どうして・・・怖がる必要があるんだ・・・?
分からない。分からないが・・・何か・・・
「私、18歳までしか生きられないの。」
「・・・・・え?」
美雪が・・・18歳までしか生きられない・・・・?
「ビックリした?」
「嘘・・・だろ・・・?」
「・・・嘘・・・だったら良いのにね。」
「っー・・・!!」
何で、何で彼女が死ななくちゃいけないんだ?
こんなに綺麗な心を持っているのに。
俺の方が死ななくちゃいけない人間なのに・・・!!
もし、神がいるのなら・・・
神は残酷だ
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