主 2013-06-22 18:50:00 |
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――…なるほどな…それだけ聞けりゃ十分だ。あの時俺と一緒に居た女は…お前だった。は…道理で見つからねぇわけだ。
(相手が向かった先はやはりあの歩道橋。少し距離を置いたままゆっくりと段を上る相手に続くと不意に向けられる寂しげな表情をじっと見詰め、語られる言葉に静かに耳を傾け。探し求めていた女が今目の前に居る彼だったというを事実を知っても不思議と落ち着いている自分がいて。相手を見つめたまま静かに言葉を紡ぎ最後自嘲気味に笑えば、そっと視線を外し近くの手摺に手をかけ眼下を見下ろし。先程まで忙しかった鼓動はいつしか落ち着きを取り戻し、出口のない迷路にでも嵌まったかのようなあの焦りや苛立ちも消えており。彼の告白を割とすんなり受け入れられたのは、彼の言う通りそこに何となく気付いていた他、寧ろそうであればいいと、心の奥で願っていたからなのかもしれない。自分が彼に抱いていた特別な感情は所謂恋情だったという事を此処で初めて素直に認めようという気になり。今までの言動からすると、恐らくは彼も同じように己を想っていてくれたのではないだろうか。通り行く車や人の流れをぼんやりと眺めながら暫しそのまま口をつぐんだ後、外していた視線を相手へと戻せば手摺から手を外しゆっくりとそちらへ歩み寄り。彼と共に過ごした筈の記憶こそ未だ取り戻せないままだが、悲しそうに笑う彼が今はただ愛おしく。触れたくなる衝動のまま彼を腕の中に収めてしまえば答えは見つかるのかもしれない。込み上げるものを今はまだぐっと内に閉じ込め、先ずは相手の発言に対し反論しつつ己の心境も語り始め)
…知らない方が幸せだ?てめぇの方こそ勝手に勘違いしてんじゃねぇよ。俺はあの日の真相を知りたかった…そして振り払っても振り払っても俺の中に入り込んで来るお前が何者なのかも。
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