主 2013-06-22 18:50:00 |
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(夢と現実の狭間で微かな物音を耳にした後、何かが優しく髪に触れる感覚に目元を覆った腕の下でピクリと僅かに瞼が動く。そっと髪を撫でながら“ごめん”と囁くような声は紛れもなく相手のもので、未だ目を閉じたままぼんやりとした意識の中で紡がれるその言葉を捉え。己が眠っている時にこそ伝えられたこの言葉は彼の本心なのだろう。けれど己は相手が簡単に己の想いに応えようとしない事を責めてなどいない、むしろ真剣に向き合おうとしている気持ちが嬉しくも愛しくもあるくらいで。不器用な癖に他人にばかり気を回す彼を本当に馬鹿な奴だと思う。馬鹿な奴だと思うと同時に愛おしくて堪らない、何度そう感じただろうか。落ち着いていた心臓が彼の言動によってきゅっと締まり再び高鳴りを見せる。今の台詞は眠っている己に対して向けたもの、此処は聞かなかった事にして眠りにつこう、そう思った矢先、ほんの一瞬ではあるが頬に柔らかな感触を得て。それが何か認識した途端、彼を思って出した折角の考えも一気に吹き飛んでしまい。「…待てよ」次の瞬間、暗がりの中そそくさに去ろうとする相手の腕を咄嗟に掴んでしまっていて)
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