執事 2025-08-06 23:25:05 |
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、、、
( 貴方の返事は何処か切なくて、胸がちくりと傷んだ。静かに廊下を歩き、空き部屋に着くと、貴方がドアを開けてくれたので、お礼を伝え入る。じっと此方を見つめてくる貴方に軽く首を傾げ、貴方が言葉を紡ぎ出せば静かに聞いて。真面目な貴方からは出たとは思えない、“立場の壁を超えても”という言葉を聞くと驚いたように目を見開いた。何時でもいいし、どんな事でも構わない、自身も同じ気持ちだ。少し視界が滲んだ。直様下を向いて素早く込み上げてきたものを指で拭う。これは、勘違いしても良いのだろうか。自身と貴方の気持ちは同じだと思っていいのだろうか。勘違いだったとしたら勿論ダメージは大きい。だけどそんな事もう気にする余裕なんて無かった 。そんな気持ちとは裏腹に、自身を守る為か、下記のような言葉を 。 )
あは 、きっと私がメルに思ってる事と、メルが私に思ってることは違うと思う、
けどその言葉は単純に嬉しいし、言葉だけ受け取っとくね
ありがと、メルからそんな言葉聞けるなんて思わなかったや、
お嬢様…もし私の思っている事がこの先叶わないのであれば、私は…もっと違う立場で貴女とお会いしたかったです。そうすれば…きっと今思い描いているどんな事も叶うから…
(半ば自分の今の立場を捨てる様なニュアンスで上記を伝えると、スッ、と相手の頬に手を寄せた。今の自分では、今の互いの立場ではこれが精一杯。もし違う立場なら…これは先程職務中にこれだけは言ってはいけないと考えていた言葉だった。つい、言ってしまった。瞬間、言葉を飲み込む様に口を固く結ぶ。あれだけ言ってはいけないと自制していたのに。言ってしまえばどんな事がこの先待っているのか、もっと慎重に考えてから発言する筈だったのに。それでも思わず口から出てしまったのは、貴女が余りにも切ない気持ちでいて、そしてとても窮屈な様に見えたから。一度そう見えてしまうと、たった今伝えられた言葉も、全て裏があるのかも知れないと疑ってかかってしまうのは自分の悪い癖で。何とか気持ちを短時間で落ち着けると、貴女の頬に触れていないもう片方の手で貴女の手を取ると、下記を言い座らせようとして)
これから行うのは、エスコートをされる側の正しい立ち居振る舞い方の講習です。私に着いて、女性として守られる立場の心遣いを学んで下さい
違う立場なら、、
( 貴方が言った言葉を反復するように呟いた。確かにそうだ、自身か貴方の何方かが、もう一方と同じ立場だったら、こんなにうだうだと余計な事は考えずに真っ直ぐ想いを伝えられるのに。それが出来ない事がこんなにももどかしい。貴方に頬に触れられると、視線を上げて貴方の顔を少しだけ見た。綺麗な顔立ち、通った鼻筋が目を惹く。本当に綺麗な人だ。そしてそのまま何かから逃げるように目を伏せると、小さく自嘲気味に笑い、下記を。 )
、、そんな事言われたら、勘違いしちゃう、
( 貴方に手を取られ、自然に座らされると「ん、分かった」と返し貴方の顔を見上げる。よりによって貴方に今エスコートされるなんて、間が悪い。神様はなんて意地悪なのだろう。エスコートとなるとやはり距離も近い。意識してしまわない訳がない。下心しか無い自身が恥ずかしくて仕方ない。そして同時に、こんな自身が講習を受けるなんて、指導してくれる貴方に申し訳なく思った。守られる立場の心遣い__ 自身には少し難しかった。なんと言うか、人に守られる事、頼る事に余り慣れていないからだ。今更色々と考えても仕方ない。そこも含めてきっと貴方が指導してくれるのだろう。 )
勘違い…
(して下さい…とは言えなかった。いや、言えるはずはない。自分が今願っている事は、多分この先一生叶わない事だから。叶わないのなら、もう願っている今意味すら無いのだから。貴方が自身から顔を背けると、こちらは少し諦めたようにだが決して相手に悟られないように小さく溜息をついた。そして伝えた通り貴方を椅子に座らせようとしたが、ふと思い立って相手の顎に手を当ててみる。自身を少し見上げるような体制になったのを確認すると下記を言い、スッと手を差し出して)
男性と一緒に歩く時、女性は男性の半歩後ろを歩きます。いついかなる場合でも、守られる立場という者は謙遜の心を忘れてはなりませんよ。“守られて当然”という慢心は相手との間にわだかまりを生みますから
(言い終えてニコ、と笑うとそこからは完全に仕事モードに切り替えた。目の前の女性は自分の主人であり、自分はその従者。命令が下れば従うし、必要なものを命じられれば即刻対応するのが当たり前。そうだ、自分は誰かの下に立ってこそ仕事が出来るのだから…とそこまで考えては次のステップに移ろうと貴方が手を取ってくれるのを待ってから、歩き出そうとし)
ん、そうだね、了解
( 貴方から言われた、慢心に関する話を言われると納得したように頷いて。貴方に差し出された手に、自身の手を軽く乗せるように添えた。今から守られる__エスコートをされるんだ、と思うと身体が少し身構えてしまう。そんな思考を消すように、貴方の手に添えられている自身の手をじっと見詰めて。その後貴方にまた視線を戻す。視線が合うとふい、と顔を逸らしてしまって。貴方が歩き出すと、言われた通り貴方の半歩後ろを歩いて着いていく。そしてふと思い出した。確か来週の水曜に、パーティに呼んでもらっていたという事を。もう貴方や他の執事にも伝えてあるし、用意していない、などそう言った何か困る事などは無いが、すっかり忘れてしまっていた。今はもし忘れてしまっても、周りの人が助けてくれるだろうが、何時までもそういう訳には行かない。今貴方にだって、慢心はわだかまりをつくる、と言われた所だ。これは慢心とは少し違うかもしれないが、周りが助けてくれる事が当たり前になってはいけないな、と。 )
そうです、ゆっくりと“守ってくれる方”を常に尊重しながら行動して下さい
(貴女が手を取ってくれた瞬間、自然な動作で手を離せば静かに微笑みを返して歩き出し。ゆっくりと歩いて中ほどの席で立ち止まると椅子を少し引いて目線で“どうぞ、座って”と促してみる。これで貴女がこちらへの礼儀をちゃんと覚えていればそれまでだし、出来ていなければまた教えれば良いか…と考えていて。そうして貴女の次の動きを待っている間に自身はこの後のスケジュールの事について考えていると、確か今週は外部に出向く特別な用事は無いが来週にお嬢様が出席するパーティーがあったと思い出して。ただ2人でいるだけであれやこれやと考えてしまう今の自分では、当日の護衛を行うのは些か不適切なのでは無いかと考えては誰か他の人に頼んだ方が良いだろうかと思いついて。その瞬間からチクチクと刺す様に胸が痛み始めたのには敢えて気付かないふりをしながら、貴女の様子を見つめていて)
( 貴方が椅子を引いてくれると、小さく会釈をして椅子の前に立つ。椅子が静かに押されると 、それに合わせて 席に座った 。合っているのだろうか 。間違えていないだろうか 。そう思いながら 貴方の 顔を ちらりと 見て 。そこからはまたパーティーの事を考え出して。何か大事な何かが懸かっているなどそういったようなパーティーでは無いが、折角呼んでもらっているのだし、その場で変な事すれば、ルーカ家の名前を汚してしまう。だから当日は誰かにドレスアップなどをして貰おうと。貴方に頼もうかと思うも悩んで。悩んでいるのは、貴方に1番自身の着飾った姿を見てもらいたいし、貴方の為に着飾りたい。なのに1番見て欲しい貴方に、他の誰かの為に着飾ってもらうというのはなんだかな、と思ったからだ。少し悲しくなってしまう。もし、綺麗だと思って貰えるのなら、他の誰かより、貴方に思われたい。貴方は自身を着飾る時、何を考えているのだろう。 )
良く出来ました。もう少しお辞儀に時間をかけると尚良いですね
(貴女が会釈をし椅子に座ると、上記を言い微笑み。スカートの折れ目や足の置き場も見てみると特に問題は無く、このまま会食等に出向いても問題は無いだろうと思われる。後は食事のマナーだと、厨房に内線を入れて食器を持ってきてくれる様に頼んではそれを待っている間、妙な緊張感で胃までキリキリと痛み出した。決して貴女には悟られまいと振る舞いつつ、今の自分では貴女の護衛は務まらないという事をなんとか伝えなくてはいけないという思いから静かに貴女の隣の椅子に腰を下ろせば、そっと口を開き)
お嬢様…伝えておかなくてはいけない事があります。聞いて頂けますか?とても…大事な事です
(言った所でどうするのかという思いもあった。だが、彼女に危害が及ぶかもしれない状況に置くことは絶対に出来ない。着付けから相手の素敵な姿も何もかも全て自分が全て見たいという思いは捨てきれないままで、じっと目を見つめていて)
、、 ? なぁに 、
( 貴方が何やら真剣な顔で言うので 、なんだろう 、と少し身構えて 。貴方がじっと目を見詰めてくるので少し首を傾げるも、言い出すような気配が無い貴方。もしかして、こちらに気を使ってなにか言おうとしているのを戸惑っているのだろうか。そう思うと 、「 メル 、いーよ 、 」とだけ言って貴方が言いやすいようにと、少しだけ微笑んだ。大事な話だと言っていた。どんな内容なのかは分からないが、何となく不安な気持ちが大きかった。貴方の表情から、いい内容では無いということは容易に見て取れたからである。少し視線を下げて、スカートを少し掴むように手を握りしめ、その手を少し見詰める。はっとしたようにまた視線を上げると貴方の方を真っ直ぐに見詰める。 )
…あの…来週の会食の件なのですが…
(神妙な面持ちをしている自分を見かねたのか相手は静かに先を促し、自分を見つめている。キリ、キリ、と締め付けられる感覚につぅ、と背中に冷や汗が流れれば上記を言いかけて止まってしまう。自分が思っているよりも、どうやらこの身体はこの件を伝えるのは自分にとって重荷に感じているらしい。少し荒くなった呼吸と共に、もう本当にこのまま彼女の傍にいる事が出来なくなってしまうかの様な声のトーンで、下記を続けて)
当日はドレスアップから護衛まで、他の執事若しくはメイドに頼んだ方がよろしいかと思うのです…
(言い終えると貴女からは分かりにくい様に執事服の上から腹部を掴み、そっと呼吸を整える様にしていて。貴女が自分の提案にどう答えるかなんて解らなかったし、正直な所聞きたくもなかった。だがどうしても聞かなくてはならないし、ずっとこの場に座っている事も出来ない。じっとしたままで、答えを待っていて)
、、ぇ 、
( 貴方から聞かされた言葉に、頭を殴られたような感覚がした。いつもこういった時は、メルがドレスアップから護衛まで全て行ってくれていた。というか、メル以外の人に当たった事が無かった。なのにどうして今…。自身が貴方に余計な事を言ったから、、?私にそういう気持ちを向けられているのが、心地悪くて?私と貴方の気持ちは違うのだと遠回しに伝えるため?貴方がどういう意図でそれを自身に言ってきているのかは分からないが、自身が思いつくのは悪い想像ばかりで。貴方にそう言われてしまっては仕方ない。自身と居るのが苦痛だと言うなら、引き止める理由もない。先程、自身と少しでも長く、時を共に過ごしたいと言ってくれたのは、ただの同情だったのだろうか。少し目頭が熱くなるも、何とか抑え込むと返事をして。 )
、、そっか、分かった。じゃあ、他の人に頼んでおいてくれる、?
(いつに無く素直な返答に、思わず顔を上げて目を見開く。その瞬間泣きそうな貴女の表情に気が付き、珍しく慌てた様子で立ち上がるとティッシュ箱を取りに行った。直接差し出すよりは…とテーブルの上にそっと置いて貴女の方に移動させては、手袋越しにゆっくりと体温を感じる様に手を握って)
…決して、今抱いている感情は負ばかりではありません。今の私では…お嬢様に執事としての忠誠心や主人を慕う心以外の私的な感情を抱いてしまっている今の私では…満足に護衛も、ドレスアップも務まらないと思ったのです…
(上手く、伝わっているだろうか。自分は、相手に負の感情等抱いていない。逆に好き過ぎて、その私的な感情を業務に持ち込んではならないとはっきりと自覚しているが故の発言だったという事が。このままだと“本当に相手の事を自分好みに動かしてしまいそうで怖い”というのは確かに負の感情かも知れない。“相手といついかなる時も離れたくない”という不安も抱いている。だが、それだけだ。それ以外には何も恐怖も不安も感じていない。だがやはり今の自分ではちゃんと務められないというのが確定している以上伝えなければならない言葉を発し)
私が貴女とこの先もずっと一緒にいたいと思っているのは紛れもない事実です…ですが、それと今回の事とは別な話なのです。大人の事情…とでも言っておきましょうか。ですので、この事は私から、他の者に頼んでおきますね
、ごめんなさい、
( 貴方の前で泣くつもりなんて無かったのに。気付かれてしまった。貴方の前だけでは、泣きたくなかったのに。今まで長い間貴方とは一緒に居るが、涙は見せないようにしてきたし、恐らく貴方には未だ見せた事が無かったはずだ。だけどそれも今日で崩れてしまった。いけないと分かっていても、一度溢れてきたものは止まることを知らずに流れる。それを貴方が持ってきてくれたティッシュで拭くのを繰り返す。早く泣き止みたいのに、止まらない。貴方に手を握られると一瞬びっくりして手を引きそうになるが、何とか抑えた。貴方が自身に伝えてくれている言葉は、全て聞こえているが、泣いている為、まともな返事をする事が出来ず、うん、うん、と泣きながら頷くことしか出来なかった。 )
お嬢、さま…
(急に見せられた涙に戸惑う。同時に、見惚れていた。自分が相手の頬に触れて流れてくる涙を拭うのは何か違う気がする。だがこのまま泣いているのをただ眺めているのも、“執事”としての立場では間違った行動だというのは理解している。だかそれ以外にどうすれば良いのかも解らない。絞り出した言葉は上記で止まり、どうすれば良いのか必死に考えた末にそっと貴女の頭に手を置いた)
大丈夫です。私は、ずっと心から、貴女の身を案じておりますから
(静かに、よく伝わる様にゆっくりと言葉を発して。その後は涙が止まるまで頭を撫で続け、その内に食事のマナーを伝授する為に自身が依頼した食器類が運ばれてくると、そっと離れて貴女が泣いているのを悟られない様にさり気なく隠しながら準備を進めるだろう)
( 泣いてしまって申し訳ない気持ちが物凄かった。貴方が困っているのも伝わってくるし、何より、この状況で泣くのは何だか卑怯な気もする。貴方が頭を撫でてくれ出すと、驚きで少し涙が引っ込んだ。それを利用して何とか泣き止むも、目の赤さや腫れ、鼻の赤み等は直ぐに消せるはずはなくて。先程貴方が頼んでくれていた食器がタイミング悪く今運ばれてきた。すっと持ってきてくれた執事から顔を逸らすも、その必要は無かった。さり気なく貴方が隠してくれていたのだ。本当に有難かった。執事が食器を並べ終えて部屋から出ていくのを見送れば、立っている貴方を見上げて「、ありがと」とお礼を伝えた。)
、、泣いてたの、バレたくなかったから、助かった。
というか、いきなり泣いてごめんね、
ん、疲れてたのかな、うん、きっと疲れてただけ。
ほんと大丈夫だからあんま気にしないで
( と言うと笑ってみせた。食器に向かい合うと話題を逸らすように「何すればいいの、? 」と質問を投げかけた 。 )
(準備を終えた執事仲間が何も無くこちらに礼をして去って行くと、上手く隠せたと安堵し胸を撫で下ろした。きっと泣いてしまったのはお嬢様自身も戸惑っただろうし、極力人には見せたくなかったであろう姿を不可抗力とはいえ自分に見せてしまったのだから嫌な気持ちにならない訳がない。そう思いつつ振り返ると発せられたのは自分が予想していなかった言葉達で、少し圧倒された。いや、正確には予想はしていたが当たって欲しく無かった事実で戸惑ってしまった。そしてそのまま話題を逸らされると、自分は思わず相手の手を取って)
お嬢様、謝らないで下さい。もし…私が当日護衛に付けない事についてこれ以上の説明をお嬢様が望むのであれば、私は自身の身を削って打ち明けなくてはなりません。それだけ…今回の状況は特殊なのです。どうか、ご理解下さい…
(言い終えると『何とも、人の心情とは難しいものですね』と呟きながら片手を貴女の頬に当てて、切なげな笑みを作り。その後の問いには『会食はフランス料理ですので、先ずは各食器の使い方を確認しましょう。フォークやスプーンは、外側から順に使うのでしたよね?』と返して)
… えぇ 、
( 上記のように相槌を打てば、その話は一旦頭の中から完全に消す。そしてそのまま講座の方にだけ集中しようとする。フォークとナイフは外側から。基本中の基本だ。貴方からの問い掛けには軽く頷いてみせた。スープは手前から奥に。この時、食器の音がしないように。スープが少なくなれば左手で右奥に傾ける。これらは全て以前に貴方に教えてもらった事だ。時たま、貴方から指導を受けつつ、講座は進んでいく。ふと顔をあげて貴方の顔を盗み見る。やはり先程泣いてしまったことが気にかかって仕方ない。貴方が自身に伝えたいこと、何となくは理解できた気がする。本当に何となく、ではあるが。そんな事を考えていると、自身の口と身体が無意識に動いていて、座ったまま、隣に居る貴方の服の裾を掴めば、「…、どうしたら、好きになってくれるの、」なんて問い掛けていた。直ぐにはっ、とすると慌てたように裾から手を離し、あわあわと。一体自身はなにを口走っているのだろう。貴方の立場的にもこの質問は良くない。 一瞬両手で顔を覆ったあと、手を外すとこう言って 。)
ごめん、なんでもない。
……気にせず、今の事は忘れて、
…そうです。…そう、…そこはもう少しゆっくりと行った方がより丁寧に見えますね
(貴女がこれまで覚えた事を少しずつだが着実にこなしていく様子を見守りつつ、時たま注意点を伝えながら講座は進んでいき。もう後は問題無いだろうと自分が感じた所で、ふと服の裾を掴まれる。何か問題があっただろうかと貴女の顔を見つめると、不意に呟かれた言葉に胸が詰まった。どうして相手は自分の伝えたい事をこうも解ってくれないのだろう、と独りよがりな考えが湧いてしまって思わずその手に自分の手を重ねようとするもすぐに離されてしまいそれは実現せず。代わりにまた、“気にしないで”と言われた。気にしないなんて、出来るわけがない。寧ろ気にしすぎている事を悟られない様に必死に取り繕う今の状態は、今の自分にとってこれ以上ない拷問だ。それを伝えたくてもどう伝えれば良いのか未熟な自分では解らず、だが伝えてはいけない言葉なのだろうという事は何となく解るので、言われた通り気にしていない風を装っては何とか講座の今日の分を終わらせると下記を言い、少し足早に空き室を出て行こうとし)
これにて、今日のマナー講座はこれで終わりになります。私はこの後ご主人と仕事の打ち合わせがありますので、申し訳ございませんがお部屋へは1人でお戻り下さい。では…
うん 、
( 出て行こうとする貴方を止める理由なんて無く、そのまま頷くと貴方が出ていく背中を見送った。ふぅ、と息をつくとその場にしゃがみ込む。自身は何を口走っているのだろう 、あれじゃ貴方を困らせてしまっただけ。ちゃんと気持ちを切り替えて貴方と接さないと、と思うとゆっくりと立ち上がり自室へと戻る。戻ってからというと、貴方とどのように接していこうか、等をずっと考えて。考えれば考える程、余計に分からなくなってしまう。だけど今のままではいけない。それは分かっているので必死に考える。このままじゃ貴方とぎくしゃくしたまま。それは嫌だった。パーティーの際に貴方が来れないのはもう解ったし、納得もしている。何も言うことは無い。貴方が自身と同じだと言ってくれたあの言葉を信じるしか無かった。 ぼーっと考えているとコンコンとドアがノックされ、執事が入ってくる。その執事は貴方ともよく話している人だった。どうやら廊下にブローチを落としてしまっていたようだ。執事の手には自身の胸元にあったはずのブローチが握られていた。それをわざわざ届けに来てくれたということだ。お礼を述べてブローチを受け取れば、執事は出ていった。ベッドにごろんと寝転べば、何となくそのブローチをシャンデリアの光に翳してみて 。 )
失礼致します
(空き室を出ると、真っ直ぐ執事室へ向かった。あそこなら短時間でも1人になれると考えたからだ。だが、より1人になれる可能性が高い自身の寝室には行きたくなかった。その理由に、今の自分ではしっかりと当てはまる言葉を導き出す事は出来なかった。執事室に入ると、案の定今の時間は誰も同僚はいなかった。ほっと一息ついては並べられている椅子のひとつにゆっくりと腰を下ろして大きく息を吐く。あの場から離れる為の口実とはいえ、やっぱり嘘は良くなかっただろうか。相手の事だから、自分が離れてから色々と考えているかも知れない。そんな考えが湧いてきて、休もうと思っても休めなかった。時期に1人の執事が入ってきて、隣に座った。今日の出来事を情報交換する中で、先程廊下でお嬢様かブローチを落としていたと知った。自分がついて部屋に戻っていたら落とした事にもすぐに気付けただろうという思いと、拾ってくれたのが相手で良かったという思いが脳内を駆け巡り一言、『ありがとうございました』と告げては執事室を出た。この後またお嬢様に会わなくてはいけないと考えると少し胸が苦しいが、仕事なので仕方ない。出来るだけいつも通りを装いながら、お嬢様の部屋へ続く廊下を歩いていて)
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