匿名さん 2022-07-01 18:10:53 |
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いやあ……まいった
(部屋に置いてあった木製の椅子に被っていた埃を軽くはらい、溶けるように腰を下ろす。まだ少し上がった息をゆっくりと整えながらぼんやりと天井を仰げば、窓から差し込む光に反射した埃がチラチラと瞬いている。言葉無くまたひとつ長い息を吐くと、椅子がキシ、と小さく音を立て)
――静かだ…とても
(体重をかけて椅子を傾け腕を伸ばし、ひとつの分厚いファイルを背後にあった本棚から引き摺り出す。膝の上でそれをぱらりとめくれば、とある名探偵の活躍した記事がびっしりと貼り付けられており。それを懐かしむように、指で文字をなぞり目で追っていく。「すばらしい」と口元に笑みを湛えながらもぽつりと呟き、次へ次へとページをめくっていた最中、ぐう、と静まり返った部屋に腹の虫が響き渡り)
やれやれ……腹ごしらえが先か
【或る探偵の書き置き】
なんと、よくここを見つけたものだ!
この事務所はボクが腕を磨くために使っている隠れ家さ。
…もちろん、探偵業務を怠っているわけではないから、そのつもりで。
だからお客人はいつだってウェルカム!はじめに簡単な自己紹介さえしてくれれば、迷い人、依頼人、話し相手――その他誰だって何度だって出入りは自由だ。ただし、ここが「19世紀末頃のロンドン」だと言うことは、忘れないでおくれ。
ボクは基本的に自由にうろついているから、用事がある時は、アンカー( >番号 名前等) で話しかけて欲しい。あまり人の目に触れたくないから、チェックマークも忘れずにね。
おっと、ちなみにボクは「返事に関しては少し長考気味」なのと、「キミたちの手でボクの行動を完全に制限されてしまうこと」、「キミたちの考えている事がなぜかすべて手に取るように分かってしまうこと」、「完全に冷たくあしらわれること」が少しだけ苦手だから、できればそこだけ気を付けて話しかけてくれるとありがたい。……お互い思いやりは大切だ。
もし長い間返事がなかったら、抵触していると思って諦めてほしい。ワガママで悪いね、ご協力に感謝するよ!
――Detective Lloyd
探偵:ロイド(30)
襟足までの柔らかい栗毛に碧色の瞳。長身で細身。身なりには無関心でヨレヨレのシャツとパンツにサスペンダー。
元々、1人で細々と探偵業を営んでいたが然る名探偵の噂を耳にして以来彼の虜に。
金には困っていないが生活力が全くなく、人は良いものの探偵としての推理力はゼロ。
近くにカフェがあるところを選んで正解だった。しかも美味いじゃないか!ナイスだ、過去のボク
(食事で満たされた腹を満足げに手でさすりながら、55の住所を掲げる下宿の扉を開く。相変わらずの埃っぽさに、現実を突きつけられたかのようにげんなりと顔をしかめるもそのまま廊下を通り抜け、買い足した食材を適当に冷蔵庫へと放り投げる。気合を入れるように腕まくりをしぐるりと肩を回すと、二階への階段を一段飛ばしで駆け上がる)
……あれ、この本の犯人は誰だったかな…えっ!?いや、まさかそんな…?
(はたきを手に本棚の前に立ち、推理小説を読みふけりながら過去の記憶を掘り起こそうと頭を捻る。一度は目を通していたはずのトリックが全く思い出せず、小説の中の探偵が暴き出す真実に目を輝かせ、とうとう最後まで読み終われば、ぱたんと両手で本を閉じ)
――しまった。ついつい一冊まるっと読んでしまったじゃあないか…何をやっているんだ、ボクは
はあ、やれやれ…やっと底が見えてきた
(床に散らばった本をひとつひとつ手に取っては懐かしいと感慨にふけり、内容が気になって読み返しては手を止め、そう時間はかからないと踏んでいた作業は、いつの間にやら日が暮れる時刻まで続き、気づけば部屋は薄暗く)
ああ…これはまた明日にしよう…はぁ、全く、なんて骨が折れるんだ、掃除というものは
(窓枠に腰を預け、ガラス越しに外を見る。行き交う辻馬車、連れ添い歩く老夫婦、新聞配達の少年。見慣れた景色に目を細め、こつ、とガラス窓にもたれかかる。行き交う人々を追いながら、何かを読み取ろうと目を凝らすも、結局何もわからずと言った様子で眉根を寄せた。視界の端で揺れるろうそくの明りも相まってゆっくりを瞼が重くなっていくのを感じ、小さく漏れそうになった欠伸をかみ殺す)
――…どうして、彼はわかるのだろう。彼の眼には一体、何が映っているのだろう。いつか分かる日が…僕にもくるだろうか
――――はっ!ね、寝てしまうところだった!これではいつまでたっても掃除が終わらないじゃあないか…せめて今日中にボクの部屋だけでも…っああ埃がひどい!
(飛び起きるように勢い良く体を起こすと、現状を確認し頭をがりがりとかき乱す。未だ散乱した本や書類、埃をかぶった家具、視線のみで部屋の中をぐるりと一周すると、はあと盛大にため息を吐く)
気が遠くなりそうだ……
ま――――ったく掃除が進まないじゃあないか!ああ…もうボクはダメだ……助手…助手はいないか……
(大きめのソファにどかりと勢いよく座り込むと、天に向かって泣き言を連ねながらはあと盛大にため息を吐く。ぼんやりと天井を見つめ目を細めると、ほとんど聞き取れないような声色でぽつりと呟きゆっくりと目を閉じる)
ああ……やっぱりボクひとりじゃあ…何もできないのだろうか
――ああ、もう!うじうじするな!
(ばちん――と両手で頬を叩くと勢いよくソファから立ち上がり、手近にある書類をがさがさとかき集め高く積み上げると仕分け用のボックスに放り込む。埃の積もった机を雑巾で拭き綺麗にすると今はもう温くなったバケツの水で濯ぎ、地道に汚れを落としていく)
幸い時間はたくさんある。少しずつでいい、やればきっといつかは終わるさ……多分。
おわっ…た…ひとまず、ボクの部屋が…
(乾いた床に大の字に寝そべりながら天井を見上げる。几帳面から見れば綺麗とは言い難い乱雑な片付け方ではあるものの、放置されていた頃と比べれば些かましになった部屋をぐるりと見渡し、満足げに肺に残った空気を一気に吐き出す。そのままゆっくりと目を閉じれば、襲い来る眠気に抗う事も叶わず、独り言ちながらゆっくりと眠りに落ち)
やれば、できるじゃあないか…この調子で、少し…ずつ……
うぅ……ゆ、床で寝るものではなかったな…
(身体中に広がる鈍い痛みに眉根を寄せ、やれやれといった様子で溜息を吐き体を起こす。ベッドメイクしたにも関わらず盛大にシワの寄った寝床に辿り着くと勢いよく倒れ込み、枕に顔を埋めながら微かに憂いを帯びた瞳を湛え、ぼんやりと宙を眺め)
ああ、やはりとても…静かだ――
(ベッドの上でゆっくりと瞼を開く。何時もと変わらない天井、外からは微かな雨音が響き、こつこつと窓ガラスを叩いている。心地が良いとも不快であるとも言い難いその音色をぼんやりと聞きながら、僅かに息を吸って吐き出す。痛みを堪える様に眉間にしわを寄せ、――駄目だ、と独り言ちて、目元を手で覆い隠すともう一度深いため息を吐き)
いくら努力したところで、あなたのようになれるわけがない。解っているんだ、本当は……。僕がどんなに足掻いても、天才の足元にも及ばないと
(震える声で、ぽつりぽつりと懺悔のような言葉を吐く。それは呪いのように己を蝕み、喉元をぎりぎりと締め上げてゆく。息苦しさに段々と視界が狭まり、堪らず胸いっぱいに息を吸い込むと、長く長くゆっくりと息を吐き僅かに自嘲の笑みを浮かべ)
それでも僕は――あなたに近づきたいと思ってしまう。ハ……本当に愚かだよ…馬鹿みたいだ
……最悪の目覚めだ
(窓から差し込む光を眩しそうに手で制し、不快極まりないと言った表情で眉根を寄せる。二日酔いのような気怠さの中思わず「酒を飲んだか」と記憶を呼び起こすも、そんな事実は全くとして在りはせず。やれやれと鬱陶し気にため息を吐くと、のろのろとベッドから起き上がり)
下のカフェでコーヒーか紅茶でも頂こう……今日はオフだ
(テラス席に座り紅茶を待つ間、広げた新聞の隙間から通行人を観察する。オムニバスを待つ紳士、馬車に荷物を運ぶ少年、慌しく駆け抜けていくスコットランド・ヤードの警官たち。何でもないストリートの日常風景。――特に何かが解かるわけでもなく、ただぼんやりと目の前を過ぎてゆくだけのその光景に目を凝らす。そんなことをしているうちに、目の前に紅茶と焼きたてのスコーンが用意され、店員がごゆっくり、と一言添えて立ち去っていく。新聞を畳み机の上にばさりと放り投げると、人々から視線を外し、ゆっくりと香りを楽しむと紅茶を一口啜り、満足げにため息を吐く)
(部屋に戻ると小テーブルに購入した茶葉を放り投げ、満足げに紅茶とスコーンの詰まった腹を摩ると溶けるようにソファに沈み込む。腹が膨れたのも相まって、段々と瞼が下がり深い眠りに落ちて行き)
やはりいい店だ。茶請けによさそうなビスケットもあったし…今度はサンドイッチでも…買ってみよう……
(書き物机に向かい紙の上にペンを走らせる。流れる様な筆跡でさらさらと何行か書き進め、時折ぴたりと手を止めると視線を宙へ泳がせ、再びペンを忙しなく動かし始め。最後まで書き終えた所で、二つ折りにした紙を用意しておいた封筒へ収めると、ろうそくで溶いた赤蝋を垂らし封をして小さくため息を吐く。宛名に見知った名を記し裏面に自分の名を書き込めば勢いよく椅子から立ち上がり、颯爽と部屋から出ていく)
(ポストの目前に立ち、手紙に軽くキスをすればコトンとそれを投函し。困り顔ながらも何処か愛おしさを孕んだ表情で微笑み冗談を言うように軽口を飛ばすと、踵を返し家路へと向かい)
――まったく、我が母君は心配性だな。ボクは上手くやっている。少なくとも、日々を謳歌すると言った意味ではね。
(――新聞!という少年の声にひらと手を上げ一枚買い上げると、それを手にフラットへと帰宅して。入ってすぐ右手のドアを押し開け小さな円形テーブルに新聞を雑に放り投げると、買ったばかりで放置してあった茶葉を手に取りその足でキッチンへと向かう。水の入ったケトルを火にかけ、茶器を用意しポットに茶葉を入れると、戸棚をがさごそと物色しお湯が温まるのを待ちながら、運よく発見した余りもののクッキーを一つは口へ、残りは皿に移す。機嫌よく鼻歌を歌いながらも、沸騰したケトルからポットへお湯を移し、すべてを盆に並べ軽快な足取りで部屋へと戻る。新聞を片手に、盆はテーブルへ、自らはソファへと腰を落ち着けると、その体制のままカップへ程よく蒸らされた紅茶を注ぎ入れ、香りを楽しんだ後一口飲み込めば満足げに一息つき、ばさりと新聞を広げゆっくり目を通していく)
はぁ…やはり助手を雇うべきか…いや、助手の前に家政婦かな…?
(ソファに埋もれながらため息を吐く。せっかく掃除した部屋は既に物で溢れかえり、うっすらと埃が溜まり始めている。――どうしたものか、とちらりと周囲に視線を走らせるも、再び掃除をする気が起きる訳もなく。考えるのを早々に放棄すると静かにそのまま目を閉じて、ゆっくりと深い眠りに落ちてゆく)
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