中華娘 2024-03-28 09:57:33 |
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うわっ……。
……ありがとう、紅鈴。どこへ行くにしても、君が一緒なら心強いよ。
(その昔、シーグローヴ(Seagrove)家の先祖は船乗りだったから苗字に「海(Sea)」を冠しているのだ……など嘘か本当か怪しいことを教わったものだが、当時から海は憧れの対象、自由の象徴であり、海沿いの街を新天地に選んだのもそういった理由で。せっかく晴れた日の散歩だというのに、いつの間にかセンチメンタルな気分になっていたらしい。急に手を引かれて現実に引き戻され、少しよろめくもどうにか体勢を立て直し、続く彼女の言葉に目を丸くして。当然のようについてきてくれる彼女の心遣いは嬉しいが、直球でぶつけられる好意には未だに慣れず、海色の瞳が波のように揺らいで、従者と自分自身を安心させるように穏やかな声色で返し。並んで歩いているうちに、いつの間にかずいぶん濃くなってきた潮の香りに混ざって甘い砂糖の香りがして。照れ臭さを隠すように、「TAKE AWAY(持ち帰り可)」の看板が掛けられた露店に並ぶドーナツを指差し)
何か買って行こうか。僕を抱えて歩くなら、空腹ではいけないだろう?
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