倉木真澄/五条悟 2024-02-13 23:43:59 |
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〈倉木真澄〉
「そう?なら良かった、この店─」
(どうやら、自身の選択は正解だったらしい。目に見えて上機嫌になった彼に安堵した後、美味しい、と告げてくる彼の言葉に首を傾げ、そこまで言ったところで─一旦言葉を切る。手に持っていた箸をテーブル上の箸置きに置いて頬杖をつき─凄く気に入ってるんだ、と続けて、どんな話をする時よりも優しい表情で彼に微笑んでみせれば、厨房の方で仕込みをしていたらしい店主─如何にも人の良さそうな、頭の禿げ上がった老人がふと顔を見せて、嬉しいねえ、と弾んだ声で述べながら─にこやかに笑った。すっかり顔馴染みになったその店主と少し談笑した後、厨房へ戻る小さな背中を見送る。五条も口には出さないが─きっと美味しいのだろう─先程から真剣な表情を浮かべ、無言で蕎麦を啜っていた。その光景を微笑ましく見守っていると、今しがたまであれこれと難しく考えていた仕事のことが消えていくような気がする。─まあ、明日のことは明日考えれば良い。今はただ、彼らのことを愛でる方が先決だろう─と思い至り、早々に食べ終わった自身は箸を置き、二人が食べる姿を─雛を見守る親鳥のような、愛情の籠もった何処までも優しい眼差しでじっと見つめていた。)
──
〈五条悟〉
「………ん…」
(明日のことを色々考えている内に眠ってしまったらしい─一旦目を閉じた五条が、次に目を覚ましたときには空はもう明るく─部屋の中には朝日が差し込んでいた。寝起きの不機嫌な声を上げながらも着替えやら何やらの準備を済ませ、彼女を迎えに行くために目を擦りながら部屋を出る。)
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