龍神 2023-08-20 23:05:18 |
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(大好きなお父さまが好物を惜しげもなく当たり前のように譲ってくれる。その好意こそが己に与えられた愛情だと実感して可愛いと褒められるのと同じくらいに嬉しくなり。無償の愛を前にして嬉しそうに少しだけ照れ臭そうにはにかみ笑いを。瞼をすっと落として次に開く頃には己とお父さまの大事なお家ではなく、多くの人が行き交う活気なある場所だった。普段の生活の中では見慣れないほどに老若男女、多くの人がいる場所は何度介しても中々慣れる事がなくて無意識のままに技かな不安が握る手に力を込めて。到着した喫茶店は今で言うレトロな佇まいで風情があると言えるのだけど、実際のところ馴染み深くてほっとするらしい。多くの人に少しだけ強張っていた空気もふんわりと和らいで。気に入ったかと言う声に顔を上げると下から目鼻立ちのよい端正な顔を見上げて「ええ、さすがだわ。お父さまにはれめの好きなものが全部わかっちゃうみたい」じいっと見つめた後ににこぉっと花が咲くような笑みが開いて。穏やかな時間が流れるように滞在する人に余裕があるのが心地よいと浮かぶ笑みは深まりつつ、視線の先は好奇心を擽る店内にきょろきょろと漂って。案内に従いながら座席にちょこんと腰掛けて、声に出さずともわくわくと期待しているのが伝わる双眸にメニューを映して。耳に届く大好きな声に真剣な表情で落としていた顔を上げれば既にメニューには目もくれず、正面の彼だけを真っ直ぐに見て。光を受けてきらきらと澄んだ美しさを放つ白色と、こくっとした鮮やかで深い赤にうっとりと見惚れながら。白と赤の配色に、引いてはたっぷりの白と差すような赤の存在に心を奪われている事がわかりやす過ぎるのにわざと試すように問いかけてみて)
ねぇねぇ、お父さま。れめは何色を選ぶとおもう?。……れめが欲しいのは一色だけよ
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