『…人間か。』
顔を黒色のレースで隠した魔女はある物を見て傘をさしながら1度立ち止まった。視線の先には膝を折り曲げて抱えて地面に何の表情も見せない子供が居た。‘’こんな寒い雨の中に子供を置き去りにするなど、人間にも心のない奴もいるのか”と思いながらその場を後にしようとする。
――が、子供は魔女の長い黒地のスカートを掴む。人間のことがあまり好きでは無い魔女は少し顔を顰めながら“離せ” “触るな”など否定的な言葉を投げかけるが子供は一切動じず魔女のスカートを離さない。
『仕方がないな』
呆れたようにため息を着くと、魔法で子供を宙に浮かせて自分の家まで運ぶ。
『いいか、お前は成長したら私が食ってやる。…その時が楽しみだな』
子供を助けたのは単なる気まぐれ…などではなく、肉付きが良くなったら食おうと思っていたからである。
そう言葉を囁いた魔女の口元はニヤリと歪んでいた――