「 毒を食らわば 」　〆

(要望に応えれば存在するはずも無い尾が勢い良く振られているのが目に見えるようで、それはそれで満たされるような妙な心持ちを抱えながら雑な手付きで結われた髪が乱れるのも気にせず撫で続け。いっそ呑気な程に状況にそぐわない喜びを露わにする様子には呆れを覚えながらも、この常に気を張り右にも左にも敵か味方か判別のつかない人間が多い環境に置かれていては僅かな癒しの心境に至るのも確か。此方から触れれば時折見せる緊張を露わにする様な反応にも愉快さを覚え、恥も外聞も無い愚直な「好きな人」の言葉へ溜息とも笑みとも取れる吐息を零して。そこで相手の髪から手を離すのはご褒美が終わりの合図。ゆったりと紫煙を吐き出し短くなった煙草を灰皿に押し付けながら告げると、室内に鎮座する重厚な机を顎で指しそこにある書類を持ってくるよう目配せした後懐から取り出したシガーケースからまた新たな煙草を摘み上げ)
夜鈴、勉強の時間だ。