グラサンオールバックの悪魔(♀) 2023-07-02 08:48:30 |
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物好きだねェ、別にいいけどよ。
(楽しそうに笑いながら、さらりと恐ろしいことを口にする天使に苦笑いを浮かべつつ、再び頭をガシガシと掻きむしるといつの間にか丸まっていた背筋をぐっと伸ばす。彼女には見慣れた地獄の風景を見据え、ズンズンと速い足取りで歩き出した。「ンじゃ行くかァ。ワザワザ天使様に『お越し頂いた』ンだ、最下層案内してやるよ。おーい、上司!カギ寄越せよ!」と笑いながら誰かに呼びかけ、左手を虚空に向けて差し出すとその形のまま何度か揺すった。すると、「…分かったよ…持っていきな」若い男性の面倒そうな声とともに赤黒く汚れたカギの束がぽとりと彼女の手の平へ落ちてくる。その中から彼女は一本の禍々しい雰囲気を纏ったカギを選び出すと、辿り着いていた、彼女の身長の3倍はあろうかと思われるほど巨大な重々しい門のカギ穴に差し込んだ。ガチリ、と噛み合う音がしてカギが開き、彼女はその扉を相変わらず片手で軽々と押し開け、淀んだ空気がむわりと漂うと共に中の風景が露わになる。その奥には筆舌に尽くしがたい─まさに地獄、といった風景が広がっていた。罪人の絶叫が絶えず響き、悪魔たちの嘲笑う声がそれを掻き消すように更に大きく響く。罪人たちは皮膚も肉も剥がれ、生きていることが不思議なほどに痛めつけられているものが殆どであったが、中には更に酷く、骨が見えている人間もいた。彼女は久々に見る最下層─コキュートスの風景にサングラスの下の目をきゅうと細める。あァ、懐かしいー確か、昔はここで勤務していたんだっけかーと思考しつつ、「ハハ、どうだよ?」と隣の天使に問いかけ)
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