匿名さん 2023-04-29 15:14:24 |
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みっ、……ち、違います!
( 最後の三味線を弾き終えれば、ふぅと一息細く息を吐く。大好きなものにこうして触れられる時間というのは、一瞬のようにも永遠のようにも感じられて椿の中の胸の高まりは抑えられずにどくどくと高鳴る心臓はそのままに撥をぎゅ、と握りしめいた頃。唐突に問われた彼からの質問にぎょっと目を丸くして別の意味で心臓がドキドキとしてしまえば慌てて否定し。なんて金銭感覚をしているんだ、下手をしなくても一般企業の人の暫くの月収くらいにはなるのに!と椿はぶんぶん首を振れば、「 か、買うかどうかは別だと言いましたのに…!それに直政様がお気に召した音の一挺だけで十分ですから…!! 」と、自分がしっかりお金の管理をしなければ…!と斜め上の決意をして。自分は値段など気にしなくても三味線を弾くことが出来ればそれで良いのだが、恐らく小さい頃から一流を浴びてきたであろう彼の耳に合う三味線でなければならないというのは芸妓としての維持のようなもので。ふ、と椿は最後に弾いた三味線をそっと撫でながら「 これ。三絃師の袴田先生が作られたものですね。…1度だけ先生の前で弾かせていただいたことがございます。棹の感触と音の響き方が同じな気がします。 」と確認をするようにふわりと花のような微笑みを零しては、もう数年も前のことになるが遊郭にて三味線職人である男の前でその男の作った三味線を弾かせてもらったことがあると昔のことを思い出したらしく。 )
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