匿名さん 2023-04-29 15:14:24 |
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─── ……すごい……。
( 見渡す限りにずらりと並ぶ色様々な店に蘇芳の瞳を何度も瞬きさせては感嘆の声をぽつりと零して。どの店の店員も皆おしとやかな百合の花のようで、美しい女たちがものを売っているということでは遊郭と似たようなものなのに店員の女たちは皆健康的にふっくらとしており血色も良く、なにだかとんでもない差を感じてしまい。だがやはりどの店も高級志向で、とてもではないが一般庶民ではホイホイと簡単に財布を開けるような場所ではないのは椿の目にも分かる。そんなことを気にせず楽器店を探す素振りを見せる彼にヒュ、と血の気が引いては「 ほ、本当に買うおつもりなんですか… 」ところころとした鈴の声を震わせながら恐る恐る確認して。だってこういう所の楽器ってことはあれでしょう、全部新品で高級な素材でできてるものしか売っていないもの。扇なんて花魁に持たせるようなものしか売っていないわ。と語らずともその瞳はどうしようどうしようと焦っていることがわかり。……実を言えば確かに芸妓としてはそんなにお高い楽器や扇を触れるのはとっても心が踊るのだが、本当に一刻だけでいいのだ。買わずとも、その、貸し出しとかで。そんな心は恐らく彼に伝わることなく、椿はただただこのひたすらに物を買い与えられている現実の打開策を考えて。 )
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