匿名さん 2023-04-29 15:14:24 |
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ん、……んん。ふぁ。
( まだ朝の光が差し込むよりは少し早い時間。なんとも言い難い寝苦しさに目を覚ましたのか、可愛らしいうめき声を上げながらクシャ!と顔をしかめてはゆるゆると体を起こし欠伸をひとつ。なにだか体が怠いような気がするのは寝起きだからだろうか、後で白湯でも飲もうと寝起き特有の回らない頭でふらふらと諸々の朝の準備を済ませては朝食を作らねばとエプロンをつけてそのまま台所へと。まだ時間が早いのもあるせいかどうやらまだ主人は起きていないそうで、昨日と献立は同じになってしまうが自分で朝食を作ってしまおうと判断すれば漸く開いてきた蘇芳をごし、と擦った後に米の準備から朝食準備を1人始めていき。焼き魚もできた、卵焼きもできた、米は炊けるのを待つだけ、問題は味噌汁だった。出汁もちゃんと取れたのだが、そのあと具のねぎを刻んでいる時に思わず左手の人差し指の先を包丁で切ってしまい「 っつ、……! 」と人生で初めて刃物で自らの手を傷つけた痛みに思わず顔を顰めて。ジンジンと熱を持つ指先から流れる鮮血に〝やってしまった!三味線の婆に怒られる!〟と一瞬焦ったもののここが花街でないことを思い出せば安堵したように息を吐いて。そんなこんなで、〝商品〟を傷つけた事で怒る者は居ないなと安心したのかそれとも女が痛みに強いのか、それとも単に絆創膏が見つからずに諦めたのか。患部に一旦布巾の端切れを巻き付けるという荒療治で味噌汁を完成させてしまえば朝食の準備は一旦終わり。まだじくじくと指先は痛むが、せっかく1人で作ったのだから冷める前に食べてもらわないと!とぱたぱた彼の部屋に駆けていけばコンコンコン、と控えめなノックのあとに「 直政様。起きていらっしゃいますか? 」と部屋の主へと声をかけ。 )
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