匿名さん 2023-04-29 15:14:24 |
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っ、…!
そんな、こと……。
( 乙女というものは実に単純なもので、それ以上の意味を持たないというのにそれが分かっていても想い人からのその言葉にはきゅんとアッサリと心が落ちてしまうもの。椿は彼からの言葉にパッと桜が舞うように薄紅色に染った頬をそのままに、ふにゃふにゃよわよわと彼の言葉を否定して。嗚呼だめ、姐さんが褒められてもお上手なんだからって平気な顔して笑いなさいって言ってたのに。他のお客さんに言われた時はできたのに、なぜ今はできないのかしら。なにだか暑い頬を両手で抑えながらきゅうと締め付けるように痛む胸をそのままにゆるりと首を振って。と、まるで流れの読めない彼の水流のような言葉に更に蘇芳を丸くしては「 へ、?な、直政様、どうしてそんな、しゃ、三味線も扇もそんなホイと買えるお値段では、 」と、ただでさえ現状彼が自分にかけてくれたお金を考えるだけでもくらりと気が遠くなるのにそこから更に三味線やら扇やらまでプラスされてしまえばとんでもない金額になってしまうと慌てて両手を横に振りながら、だがしかし彼が1度決めたことを簡単に覆すような人ではないということはこの2日間で充分に理解してしまっているのでせめて高級店でなければいいななんて叶いそうにない願いを脳裏にかけ。彼からの気遣いにふわりと頬を緩めては、もう片付けも終わっているのでその気遣いに甘えさせてもらおうと「 はい、じゃあお風呂戴きますね。おやすみなさいませ、直政様。……さっきの、約束ですよ。破ったら怒っちゃいますから。 」と言いつつ両手でそっと彼の手を取っては、彼の小指と自分の小指をするりと絡めて指切りを。彼の黒瑪瑙と自分の蘇芳を絡めてにっこりと可愛らしく微笑んでは、軽い会釈の後にぱたぱたと素直にお風呂の方へと向かって。 )
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