永遠 2023-04-22 00:24:03 |
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…。
( 嫌な視線だ。彼ら、彼女らも昔は誰かと一緒に生活し、笑い、怒り、泣き、呆れ、喜んできたのだろうに。今となっては何故そこに居るのかも理解していないような、本当の、本来のアンドロイドに変わり果ててしまっている。光が、無いのだ。瞳の奥に、あるのは製造段階で埋め込まれた光を反射させて瞳孔の縮小拡大を繰り返すためのレンズ。それは確かにあるのに、光を感じない。無機質で冷たい、恐ろしい瞳。あるわけが無いが、もしかしたら彼女を連れ去るのではないか、そんな不安に急遽駆られた為に、まだ充分ではない充電を止めてまで手を引きその場を後にした。力の籠もる手を反射的にこちらも強く握り返した。逸れないよう、離れないように。スーパーで目当ての食材を購入すれば、目的としていたケーキ屋の眼の前まで歩を進める。早くケーキを買って家へ戻ろう、そう思いながら「 さ、今日は大盤振る舞い。好きなもの沢山買おうか。」不安を悟らせないよう、ぱっ、と笑顔を向けて扉を開け店内へと入る。何だろうか、砂糖なのか、焼き上げられた菓子類の甘い香りが店一杯に拡がる。だが、心地好い。ショーケースの前まで寄れば、「 どれがいいかな?」と、主人に尋ねた。
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