匿名さん 2023-03-24 20:11:47 |
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…はい。
( 蝋燭の火のような頼りのない声がはっきりと否定を紡ぎ、予想と違わぬその答えを楽に受け入れて前方へと向き直りかけた時、それを留めたのもまた相手の言葉で。恐怖へ立ち向かわんとする少女の意思表示に自分で尋ねておきながら意外そうに眉を上げ、どこか呆気に取られたような表情のまま一歩先へと進み出てゆく小さな肩を目で追うと、精一杯の台詞へ淡い感激混じりの従順な返事を静かに落とし。以降は無駄口を叩く事なく後方から彼女の勇姿を目に収めることと凝った館内をつぶさに鑑賞することに専心し、足取りはさながら美術館でも巡るかという優雅さで。脅かし役は人間より機械の仕掛けが主らしく、屋敷内にはほとんど生気が感じられない。二歩ほど前を行くポニーテールに従って開かれた扉の先に入れば、廊下より更に暗いその部屋ではびくつく連れ人すら危うく見失ってしまいかねず。実はくぐったばかりのその扉が突然開いて上から逆さ吊りのホラー人形が現れる脅かしの仕掛けだとは知る由もなく、誤作動で開きっぱなしになっていた木板は、少女が天井に張り付く白いドレスを見つけると同時、ひとりでに閉じて室内に完全な暗闇をもたらすだろう )
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