癒えぬ古傷。/文豪ストレイドッグス 夢也

中也、…君が？…やぁね、二人共変わらず仲良しなのねぇ…ふふ、…又会えて嬉しいわ。
（止めなさい、と彼の額を軽く指で弾くも怪我の要因が彼だと知ればほんのりと涙が止まりくすくすと微笑みを浮かべる。やっと何時もの調子を取り戻しては抱き着くのをやめて）

あいた、私と中也が？冗談はやめてほしいよ
(額を弾かれて大袈裟に痛がってみせるけど、顔はニヤニヤとしている。中原の事になると拗ねた顔して出る限りの悪口を重ねる。「姉さんは元気だったかい？」と相手の頬に手を寄せて聞く)

だって昔から仲良かったじゃない。息ぴったりで。
（仲良いからこその悪口ね、なんてくすくすと笑って。貴方の手に擦り寄っては｢…えぇ、元気だった、わ。｣と目を伏せる。＿織田が亡くなってから、彼も居なくなり気が気ではなかった。故に、この医務室は一時期暴徒の巣窟、つまりは打ちひしがれた己の城となっていた。なんて、言えず。）

そんな風に見られていたなんて、心外だよ…
(わざとらしく泣き真似をして。擦り寄ってきた相手に早くなる心臓を抑えているが、頬はほんの少しだけ赤くなってる。「その様子だと何かあったみたいだね。…ねぇ、聞かせてくれるかい？」と自分が原因の一部とわかってるのに)

……判ってる癖に。…ねぇ、私。…織田作君を失くして、貴方をも失くしたのよ。…莫迦。許さないんだからね？
（彼の穏やかな亡き顔は、忘れられない。直後に消えた貴方の面影だけは、もう無い。思い出してしまいまた瞳が潤む。古傷が抉られたあの出来事の所為で、私は。＿マフィアを辞めようとしていた、と言いかけては止めて。）

私の中で思うことがあったのだよ、それをここでは消化しきれなくてね、君に黙って居なくなってしまった
(織田の最期をまた思い出してしまい奥歯を噛む。古傷を優しく素手でさすられた感覚になり、私はまだ捨てきれないのだろうと心の中でため息を吐く。本当はここを私と一緒に逃げて欲しかった、という言葉を飲み込んで)

…織田作君に何か云われたんでしょう？彼の事だから…人を救う方へ、みたいな事でも云って……でも、……今の貴方、凄く幸せそうよ。
（貴方を責めることなんてやっぱり出来ない。きっと、彼にとって貴方にとってこの決断は正しい。だからこそ＿貴方は幸せそうに見えるのかもしれない。貴方の額に優しく口付けを落としては｢遠い昔、額への口付けは天使の祝福と呼ばれていたそうよ。｣天使の名を持つ自分からの最大限の祝福。貴方の傷を消毒液を染ませた脱脂綿で拭き。）

織田作、きっと彼は私の1番の親友だったよ
(全て当てられて叶わないな、と苦笑いをする。幸せそうと言われて曖昧に笑って返す。この幸せの隣に姉さんがいてくれたら、と何回考えたことか。「天使の口付け、姉さんがいつか本物の天使になったら迎えに来てくれるかい？」と相手を見上げて)

私にとっても一番の友達だったわ。勿論貴方もね、…あら。私が先に死.んだらって事？物騒な事云わないで頂戴よ。…勿論、迎えに行くわ。
（いっそ連れ出してくれれば、この血にまみれた裏世界から連れ出してくれればどれほど良かった事か。そんな無いもの強請り貴方に出来る筈も無く。貴方からの問い掛けに苦笑を零すも頷く。｢ねぇ、…私を、連れ出してよ。｣まるで幼い子供のように甘えた口調で貴方に言ってみせる。その瞳の奥は黒く黒く、澱んでいて。）

真逆、死.ぬ時は一緒だよ
(相手の額に自分の額をくっつけて見つめる。いくら人の感情はある程度読めるようになったと自負していたけど、相手の本心だけは全く読めなくて。こんな所で利用されるくらいなら私が手篭めにしてしまいたい、ずっとそんなことを考えていたのに、それが現実になるとは、と息を飲む。「…私でよければもちろん連れ出すよ」真っ黒な瞳に薄く微笑んで手を取り)

まだそんな事を云ってるの？心中なんて…でも、…喜んで。
（もう、どうにでもなってしまえばいい。至近距離で貴方を見詰めては了承の言葉に満足そうに微笑む。そして、触れるだけの口付けを貴方の唇へと落とした。昔約束していた気がする。大きくなったらね、なんて。真逆其の約束が果たされるとは思ってもいなかった。貴方の手を握っては、｢今は、何処を拠点に？｣と問い掛ける。）

心中は私が選ぶ最高の最期さ、これだけは譲れないのだよ
(触れるだけのキスに物足りなさを感じるけど、今はこれでいいとこちらも相手の口に軽くキスを残す。大きくなったら、なんて約束を姉さんは忘れているだろうと思っていたのに。手に触れる体温に安心感を求めながら「今は武装探偵社に身を寄せているよ」と返して)

面白い子。其の最高の最期を添い遂げるのが私でいいのかしら？
（昔から変わらない所もまだ残っているのだと嬉しそうに微笑んだ。冗談混じりにそう言うも貴方ならいいえ、なんて言わないと分かっている。今の拠点について知れば矢張りか。と驚きはせず。貴方は昔から聡明だからその頭脳も活かせているのだろう、と。｢なら私もそこへ身を寄せてしまおうかしら。｣きっと社員達からは質問攻めに遭うだろうが。）

姉さんしか有り得ないよ
(相手の腰を抱き寄せる。相手には隠し事をしたくない、その代わり姉さんの全てが欲しいなんて、きっと貴方には全て読まれているのだろうね、と相手を見つめる。「それはいい、姉さんならきっと歓迎されるよ」と本当に嬉しそうに言う)

…私の事、大好きなのね？
（腰を抱き寄せられるなんて少し恥ずかしい。頬を染めつつも揶揄うような一言を。あげられるものなら貴方に全てを捧げても構わない。貴方が、好きだから。…見詰める視線を合わせては｢なら、連れて行って。｣安堵したように肩を落としながら何処か急かすように）

今更ながら言わせてもらうよ、私は貴方が好きだ
(この世の誰よりも、とつけ加えて。全てを受けいれるから私の全てを受け入れて欲しいとずっと思っていた。「それならすぐに案内しよう、みんなに挨拶とかしなくていいのかい？」と、自分も全く別れの挨拶などしてないのを棚に置いてきく)

ぇ、…まぁ、だろうとは…思ってたけれど、…私も、貴方が好きよ。
（言ってしまえば告白なんて慣れたものである。マフィアの者達が挙って求愛してきた時期もあったから、でも貴方からの言葉は違う。物凄く、嬉しくて堪らず顔が赤くなっていってしまう。｢要らないわ。…所詮私は看護婦ですもの。｣自嘲的に微笑んでは貴方の手を握ったまま立ち上がり何処か楽しそうにしていて。）

なんだ、私たち両思いだったんだね
(告白されるのは慣れているし、よく心中の相手を探している為告白も日常茶飯事。でも、本当に好きな人にすることは初めてで、心臓が相手に聞こえてしまうほどに大きく鳴ってる。赤くなった相手の頬に手を添えて「真っ赤だね、まるでリンゴみたいだ」なんて言うけど、こちらも耳もそれに劣らず真っ赤で。「私と一緒のお別れの仕方だ」と微笑み)

真っ赤何て…貴方こそ耳が赤いわよ？
（いつから貴方のことを好きになっていたのかは、思い出せない程前で。きっとその頃からも貴方は私の事が好きだったのかしら…何て。揶揄するように言う貴方の耳元に視線をやってはくすくすと微笑んで。｢その方がきっと皆も後腐れがない筈、…行きましょう？｣貴方の手を引いては医務室を出る。今の時間なら脱出は余りにも容易で楽々外に出れてしまい。ここからは貴方に案内してもらおう、と｢探偵社は何処に？｣と問い掛け）

本当に姉さんには敵わないな
(誤魔化すように笑う。きっと一目惚れだったのだろう、最初に手当してもらったその日から。その全てを受け止めてくれる聖母のような性格も、たまに子供みたいな所も全部好きだと実感させてくれる。「本当に面白い人ばかりでね、きっと姉さんも気に入ってくれるよ」と相手に行ったあと、医務室に仕掛けられてるであろう隠しカメラをにらんで)