支部長 2022-11-03 00:39:25 |
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【プロローグ1:支部長就任まで】
(2074年のとある日、フェンリル本部内の一室にて、二人の女性が対面している。一人は金の長髪に喪服のような服で車椅子に乗った優しげな目つきの女性、もう一人は銀の長髪に白いF制式兵装を纏いソファーに座った厳しい目つきの女性だった。)
『先ずは、お疲れ様でした。』
……あぁ、ありがとう。
(金髪の女性が笑顔で労いの言葉を言い、銀髪の女性が溜め息を吐きながら返答を返す。思い返せばこのような態度を取り始めたのは“あの人”が亡くなった日からだろう。あの日は目の前の女に対して怒号を飛ばした己を、大切な身内が止めたのをよく覚えている。それもあり彼女に対しての不信感があり、疑いの目を向けるしか己には出来ない。)
それで、話とは?
『あぁ、そうですね。退役した貴女に、一つお願いがございます。……貴女に、とある支部にて支部長をお願いしたいのです。』
……はあっ!?
(目の前で人差し指を立てて一つ、とジェスチャーしながら彼女が口を開いて言葉を紡ぐ。退役後であれば選択肢はいくつか思いつくが、果たして彼女の願いとは何かを思案していれば、次いで紡がれた言葉に驚きのあまりドタっと席を立ってしまう。彼女はそのリアクションも想定内だったようで、くすりと笑みを浮かべながら説明を続ける。)
『私の子供たちはすくすくと育ってますが、ゴッドイーターというのは、いつどうなるか分かりません。そこで貴女に、私が創設しようとしているもう一つの隊を任せたいのです。』
……ほぅ。
(一旦ソファーに座り直して聞きながら考える。要するに予備の隊を作るのでそれを育てろと言う話のようで、支部長と、恐らく教官職も兼ねることになるだろう。ため息を吐きながら、気になる質問を次々と重ねていく。)
人員は?
『既に私の方で見当は付けてお声がけしました。あとは本人次第、といったところでしょう。』
君の言う“子供たち”にはどう説明する気だ?
『これは貴女と私の話だけに……あぁ、もちろん接触も極力避けるようにして下さい。子供たちに迷惑が掛かってはいけませんから。』
なるほど。つまり君の“子供たち”と同じようにデータを収集して、その結果を君に報告しろということか?
『仰る通りです。貴女にはそれをお願いしたいのです。必要なものは全てこちらで揃えますので…………いかがでしょうか?退役した貴女には悪い話ではないと思いますが……』
(全て想定内の質問なのか、彼女はスラスラと回答していく。フェンリル最高の頭脳を持つ目の前の科学者は、実は未来予知の超能力持ちじゃないかとかよく思ったものだ。人も、物も揃えるとか待遇が良すぎる……だが一つ足りない。)
そうだな。悪い話ではない。だが一つ条件がある。
『条件、とは?』
ウィルを連れて行く。僕が信頼する人間を一人くらい連れて行っても問題は無いはずだ。
『なるほど。えぇ、構いませんよ。』
(こちらだって信用の足る人物くらい連れていきたいもので、交渉してあっさり承諾する辺りこれも想定内なのだろう。そしてもう一つ、初めて支部長職をやるにあたり不安しかないので、正直サポート役が欲しかったのもあった。そうして交渉は成立する。金髪の女が右手を出してきて、同じように右手を出して握手を交わす。)
『交渉成立です。では、1週間後の12:00(ヒトフタマルマル)に用意した支部をこちらに向かわせますので、搭乗して他の人員を集めてください。こちらが人員のデータです。』
わかった。目を通しておこう。
(そうして時間と場所を端末に記録して、彼女からUSBメモリを受け取る。スカウトした人物たちがどのようなものか、後で目を通しておこうかと考えながらポケットにしまう。話は終わった、と言わんばかりに車椅子を操作して出口に向かう彼女を見送りつつ、小さな声で言葉を交わす)
……レアのようにするなら、僕は全力を持って支部を守る。
『ふふ、悪いようにはしませんから。では、失礼致します。』
(立ち去る彼女を見送れば、緊張が解けて大きなため息を吐きながらソファーに座る。アレと話す場合は隙を見せてはいけないから。悲劇を二度と起こさないためにも、任されたものを守り抜かなければならないのだが、さて……)
はぁぁぁ…………ウィルに、なんて言おう……。
(悩みが尽きることは、無さそうだ。)
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