匿名さん 2022-08-21 15:03:38 |
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(不確かに揺らぐ世界と不気味な程に揺らがぬキャンドルの灯の中、求め縋った答を片言隻語も聞き漏らさんとするかのように僅かに瞳孔の開いた双眸を主人へと向ける。その唇が無情に並べる句に頷くことも首を振ることもせぬまま、ただ先を待つようにじっと耳を傾けては意図を図りかねて陰影の濃い横顔を見つめるばかりで居た折。ふと光源の暖かな色合いを宿した金眼が此方を向くと、注意を奪われてそうと目を見開く。それから確かな声音で告げられた言葉は、予言めいたまじないのようで。夢を見る間に与えられている幸福など到底信じられるはずもなかったが、夢現の夜に抱かれたこの空間では気休めさえ真に迫って響き、御伽話の美しい結末を語り聞かされたような安寧への誘いが細波となって押し寄せ。睫毛の先が微かに震えたのを端緒に、目許は柔らかに細められ、口許は薄く綻び、顔の上に静かに安堵の笑みが形作られる。しかしその波間から睡魔が姿を現したなら、一瞬の意識の明滅の後、常であれば殆ど音も無く置くマグカップをコッ、と安定を失った体ごと机に預け。寝惚け眼を緩く一度瞬かせ、ちびちびと口をつけていたせいで未だ半分も減っていないミルクが溢れていないことを確認すれば、今になって漸く微睡みの泉から抜け出した様子で顔を上げて。もはや微笑の跡形も無い面貌に仄かな混乱の気配を漂わせると、何を言うべきか迷った末にぽつりと当初の目的を呟き)
……戻ります。
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