匿名さん 2022-08-21 15:03:38 |
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っとに、可愛げのないガキ……。
(己の声音が呼び水となり、凪いだ湖面のように透き通る双眸が静かな夜へ鮮やかに燈る。そこに先刻のような波紋は見当たらず、一先ずの落ち着きを得たらしい事を密かに確かめて。一方、彼が紡ぐ言の葉もまた常通り甘えのないそれへと変じれば、詰まらなげに悪態を吐き、ふんと気怠げな瞳を窓辺へと逸らし。――大樹の合間へ設けられた窓を一枚の絵画のように彩るそれは、満点の星空へ鋭く輝く弓形の月。欠けこそあるものの変わらず美しい森の夜空は相手との初対面を何処と無く彷彿とさせるもので、少々複雑な心境に眉根を寄せた折。彼らしくもなく朧気な疑問符を伴い、深夜の冷えた空気を揺らす声にゆるりと視線を戻すと、何処か望洋と魂の抜けたような眼差しでマグカップを両手に包む少年の姿。窓辺から注ぐしなやかな月明かりが、闇夜を弾くと共に寄る辺を持たぬ天涯孤独な彼の印象を一層浮き彫りにするようで。初対面時から続く異質な振る舞いからその人格形成の過程に思う所は多々あれど、常人の理解や常識を遠く離れた自分の元での生活など、到底身を置くべき場所でもなければ一時の仮初にしか過ぎないのは確かか。呆気なく散った先の夢幻と同様、奇怪な魔法陣すら嘘のように消失した元の平凡な机上へ視線を落としては、ただ淡々と感情を排した事実のみを連ねていき。しかし、最後に顰めた眉を僅かに緩めて視線を重ねたそれは、今までさして音を伴って来なかった暖かな響きを芯に持つようで)
まぁ、俺のような魔術師との生活なんて瞬きの間に生まれた夢想のようなものだ。前に言ったように、次の受け入れ先もそう間もなく見付かる。お前はただ、先と同じように少し目を瞑っていればいい。……その悪夢は、もうじき終わるよ。
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