匿名さん 2022-08-21 15:03:38 |
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(もどかしげに主人の喉奥で支えた何かは、言葉には変じずにやがて深い溜息として吐き出され。気に障る点があるのなら望む振る舞いを一言下命すれば良いものを、ここまで不快感を露わにしていながら此方の矯正を試みもしない不可解に、何となしに大息の行方を目で追うもそこに希求する答が浮かび上がるはずもなく。仕方無しにトレイへと向かわせかけて行き場を失った両手を体の前で緩く結ぶと、黒のローブの揺れた後を視線で辿り、不服げな面持ちながら病状を顧慮した言い置きに「はい」と承知の音のみを返してその背を見送る。当然のように放たれた後者の手段に引っ掛かりを覚えたのは完全に扉が閉じ切ってからのことで、魔術無しに精霊と意思疎通が図れるのかと宙に浮かぶ発光体を探すも辺りは仄暗いばかり。他の手段が存在する以上詳解を求めて態々ダイニングに足を向けるのも憚られ、言い付け通りにベッドに潜ると代わりに枕元で微かな冷気を放ち続ける魔石を手に取り眺める。宵闇の中でぼんやりと光を纏うそれは一層神秘的で、つい青緑色の瞳に近付けて見入った刹那。突如魔石から発せられる冷気が肌を刺すような鋭いものに変化し、手のひらに伝わる冷感も凍てつく程に強く感じられれば反射的に手を離して取り落とし。ぼすっ、というくぐもった音と共に掛布団へと埋まった魔石は恐々と手を伸ばす頃には放つ冷気も触れた表面も元の心地良い温度に戻っており、極端に周囲の冷えた窪みからそれをそっと拾い上げると枕元の少し離した位置に置き据える。寝台に寝そべって肩口まで掛布団を被り、固く瞼を閉じては、跳ねた心臓が常の拍動を取り戻すのを待ちながら今度こそ眠りに就いて)
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――……! …………、ゆめ……。
(嫌な心音で目を覚ます。大きく見開いた眼前には暗闇と静寂。先程まで広がっていた光景は何処へやら消え失せ、しかし口から飛び出しそうな程大きく脈打つ心臓と薄い膜を張るようにじんわりと汗ばんだ体が確かにそれを見たのだと物語っていて。目を覚ましたその時の状態のまま浅く短い呼吸を繰り返すと、惑乱した頭も漸く落ち着いてきたところで弱々しい呻き声を漏らしつつ上体を起こす。感覚を確かめるように右の手指を曲げ伸ばすこと数度、恐ろしい体験の正体を確信すれば、安堵の溜息と同時に夢の中では出なかった声が自然と零れ落ちていて。そのまま暫し眠りたくない心緒と眠らなければならない使命感の狭間で揺れ、人工光が無いおかげかやたらと綺麗に見える星空を眺めていた折。ひらりと蒼の光が扉を抜け出てゆくのを捉えては、急いで布団の中から這い出て床に足をつける。夕刻の出来事を参照するならば水精霊が向かう先は主人の居所。どの程度夜が更けているのか確認する暇もなく、万一にも主人の休息を妨げるようなことがあってはならないと、優雅に飛び回る小さな光を極力物音を立てぬように追い掛けて)
ウンディーネ、待って……。
(/背後より失礼いたします。まずは、ミシェルの食事シーンにお付き合いくださりありがとうございました!リヴィオ様の大胆な調理法にはあまりの力技に笑みが溢れると共に、魔術師としての流石の技量に興奮しきりでした……!また、これでもかと言うほど慈しみに満ちた心温まるロルを拝読しまして、本当にミシェルは果報者だなと痛感した次第です……。
そしてロルの方、頃合いかと思いまして勝手に場面転換させていただきましたが、主様の方で考えておられたシチュエーション等ございましたら此方はスルーしていただいて大丈夫です。ここからは余談ですが、此方のロルに以前のロルと比較しての送り仮名や漢字表記等のブレが散見されるかと思います。単に基準が定まっていないが故の事象ですが、特段気にならないようでしたら目を瞑っていただけますと幸いです……。何となく気持ちが悪いということであれば以後統一するよう努めますので、お気軽にお申し付けください……!)
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