匿名さん 2022-08-21 15:03:38 |
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ミシェル、ね……随分可愛げのないガキだな。……まぁいい。"ついてこい"くらいは出来るな?
(舞台上ではおざなりな視線しか向けなかったものの、抵抗の気配なく自分の元へと連れられた少年は、成程桁が飛ぶのも多少は頷ける美しき双玉のターコイズ。だからこそ一層、その今にも消え入るような子供らしからぬ生気の乏しさが浮き彫りとなるようで。奴隷の乾いた瞳程度見慣れない訳でもないが、容姿の秀逸さも相俟って一等精巧な蝋人形の薄い唇が儚く名を紡いだ際にはつい怪訝な顔を隠せずに。一応フォローのつもりか、傍らの商人が朗々と語り始めた商品の能書きへは手早く署名した売買契約書と金貨入りの皮袋を押し付けることで強引に締めとさせ、改めて少年に向かい軽く腰を落とし。視線を平行に交わらせ、淡々と一方的に主人としての命を告げるや否や、もはや振り返る事もなくつかつかと照明の絞られた暗い客席脇の階段を降りる足取りは、仮にも酒の回る身の割に確かなそれだろうか。その際、もし背後から響く足音が思う程距離を詰めないようならば、長いローブ下に忍ばせた魔法杖を僅かに振るう事で重たげな相手の足枷を奇妙なヒビと共に躊躇なく塵に帰した後、無言のままその歩調を少し緩める筈で。舞台上では既に次の品に移り、観客の視線や関心が自分達から離れるような気配があるものの、一方で此方を追うように響く、やけに豪奢な装飾の施された武具同士が掠れる独特な金属音を聞き逃す事はなく。…無論、街中での私闘は禁じられている。だが、例の酒場の連中が向こうから仕掛けて来るのであれば話は別と、意地の悪い密やかな微笑と共に夜の帳を降ろす冷えた外気へと足を進め)
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