匿名さん 2022-08-21 15:03:38 |
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はい、かなり楽になりました。……熱、も、恐らくは。
(主人の自室を後にしてすぐ。ノブに手を掛けようとした廊下脇の扉がひとりでに開いたかと思えば、その奥から夕陽にも劣らぬ鮮やかな赤髪が現れる。想定外の鉢合わせと尋ね人が存外近くに居た事実への驚きも然る事ながら、幽霊でも見たかのように自身より一層の動揺を滲ませる相手に目を丸くして。弁明するより先に叱責の言を止めた主人の顔は普段と相違なく気難しげではあれど、眼差しには厳しさも冷たさも見て取れない。ふと動く気配がして彼が身を屈める速度に合わせて顎を引くと、殆ど同じ高さになった視線と真正面からぶつかり。そのまま少しの嘘も誤魔化しも許さぬような両眼で見据えられ、静かな問いが微かに空気を震わせれば、こくりと頷きつつ簡潔に病状の経過についての所感を述べて。併せて尋ねられた体温の異常の有無に関しても同様に頷けば良いものの、心の内奥まで見通すような視線を向けられているせいか、それとも変に融通の利かぬ性根のせいか、青緑の瞳を一度横へと逃がしては不自然に文節を区切る言行で自己判断への自信の無さを素直に表し。それから一拍置いて主人を探し歩いていた目的を思い出せば、話題の針路変更を示すだけの間の後、謝礼と謝罪と共に頭を下げ。顔を覆うように垂れる白髪が斜陽に照らされて紅を帯びているのが見えて、顔を上げると茜雲の如く見えない位置まで流れてゆく。平常時ならばそれきり閉口してしまうところ、例外的に付言された言葉たちは、失態を挽回して懲罰を逃れようとしているようにも、回復の度合を主張して主人を安堵させたがっているようにも響くだろうか)
リヴィオ様のおかげです。ありがとうございます。……それから、お手を煩わせて申し訳ありません。――朝終えられなかった今日の分の薬の調合は、すぐに取り掛かります。ベッドも出来る限り元通りに戻してきましたが、何か問題があれば直しますので。
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