匿名さん 2022-08-21 15:03:38 |
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……そうか、良かっ――じゃない。……ふん、まぁ今は精々、凡愚如きには分不相応な待遇を甘受していればいいさ。
(何やら先刻から物言いたげに、上げかけた抗議も中途で閉ざしたままの唇よりかは幾許か雄弁に語る瞳を無言の圧のみで黙殺する。一応は主たる自身の部屋や寝床を占拠する事に気後れを感じている事自体は察しがつくも、それこそ病身の子供が態々気にする程の大事ではなく。ほとほと歳にそぐわぬ気を回す少年だと内心嘆息しつつ、魔氷石を調整しながらふと視線を落とした間に生じたものは致命的な隙で。さして難しい扱いでもないにも関わらず、相手の不調を気に留める余りつい過剰な集中を魔石へと一心に注ぎ、自責混じりの焦燥と憂慮から来る懸命さが仇となって。警戒なく唇を動かした問いに常の険を乗せるのを失念したばかりか、室温の変化に伴い見るからに辛そうな表情が和らぐ兆しと共に確かな肯定が返れば、思わず安堵から口許を緩め、知らず知らず強ばっていた肩の緊張が抜け落ちて。そのまま内に暖かな埋み火を抱くような眼差しで素直な心中を吐露しかけた所で、はっと我に返り凄まじい勢いで頭上から身を退き。己の仕出かしに少々しどろもどろとなりつつも、ポーズだけは居丈高に腕を組み適当な嫌味と共に視線を逸らす事で再度態度を取り繕う。しかしながら仮にも同じ空間に、それも病を患う者を前にいつまでもそうしている訳にもいかず、早々に痺れを切らしては剣呑な眼差しで寝台ごと視線で貫くと、やたらつっけんどんに睡眠の如何を問うて。先程の失態を引きずり何処と無く調子を崩したまま、あれやこれやと口調に過度な棘を纏う割には露骨な奉仕精神を次々と矢のように相手へ放ち)
……眠れるか。あるいは、他に欲しい物やして欲しい事とか……あぁ、腹は? 朝食もそう食べていなかっただろ。――無意味な遠慮なんてしようものならこの場で灰にするぞ。
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