匿名さん 2022-08-21 15:03:38 |
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……ごめんなさい。
(俯き加減な頭部へと手が伸びる気配に、姿勢は変えぬまま咄嗟に身を固くする。しかし待てど如何なる衝撃も与えられることはなく、不審に思って顔を上げれば軽侮とも失望ともつかぬ難しい顔をした主人がそこに居り。その表情の意味するところなど察せるわけもないが、その時自分でも驚くほど自然に口を衝いて出たのは、失態を犯した奴隷の謝罪ではなく叱責を待つ少年の反省の言葉で。朝露の採集量を確かめに行くのかと足を踏み出した主人の動線を目で追えば、その目的地が自分の座る位置であるらしいことを瞬時に悟り、体を九十度回転させては膝を向かい合わせた形で座り直す。魔術の知識に乏しいために呪いを受けたか否かすら定かではないが、これまで屋内屋外にかかわらずウンディーネ以外の姿らしい姿を持つ超自然的存在との接触は無く、訝しげな問いには少し迷った後にゆるりとかぶりを振って。とはいえ額へ伸べられる自己判断より遥かに信憑性の高い手を払い退ける理由もまた無く、一切の抵抗なく受け入れれば、輪郭が不明瞭になってやがて二重に見えだす主人の顔をぼんやりと眺めて)
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