匿名さん 2022-08-21 15:03:38 |
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(踏み出しかけた一歩を、此方に背を向けた主人の一声が制す。その背からは分かりやす過ぎる程の怒気が放たれていたが、命令文が『ついてくるな』ではなく『待っていろ』だったせいだろうか、先程のような激しさは感じられず。力が掛かって緊張した爪先の筋肉を、振動すら発生させないようゆっくりと弛緩させてゆく。重心が踵側に戻る頃にはもう部屋の中に主人の姿はなく、入れ替わるように姿を現したのは例の水精霊〝ウンディーネ〟で。怒気の割に静かに閉じられた扉にまさかまた何かが始まるのかとやや身構えるも、精霊にその気は無いらしく、ダイニングには窓の外から聞こえる自然音が満ちるばかり。数秒間の睨み合いにてそれを確認すれば、回遊する精霊を目で追うのもそこそこに、命令通りに主人の戻りを待とうと再度椅子に腰を下ろして。子供が何をするでもなくただ手足を揃えて行儀良く座っている様はある種異様な光景とも言えるが、それを異様だと認識する者はこの場にはいない。故に特段疑問も抱かず規則的な呼吸のみを繰り返していたところ、不意に脳内に主人の声が蘇れば一定のペースを守っていた呼吸がひっそりと一瞬止まり。逡巡するように机の上で視線を左右に揺らした後、椅子から立ち上がる。身分も忘れ、健やかに過ごして、手を無用に煩わせない。先程の言い付けを呪文のように心の中で唱えると、思い出したようにポケットに入れていたチョコレートを口に入れ、食器を片付けるべく流し台へと皿を運び始めて)
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(起床は普段通り夜明け前の時刻だった。日が昇る時刻だって一日でそう変わるものではない。しかし月光をふんだんに浴び、小瓶の中で神秘的な光を湛える朝露の採集量が普段より少ないのは誰の目にも明らかで。ランプに翳した小瓶を暫く眺め、これでは主人に命じられた量に達しているかすら定かではないと忍び寄る焦燥感に耳を澄ませる。現実から逃れるようにちらりと視線を横へ滑らせれば、そちらにはきっちり規定量採集された薬草があるものの、それも採集を終えたのは主人の紙鳥達が戻ってくる頃。能率が落ちていることは言うまでもないが、作業自体は昨日とまるっきり同じだったためにこの現象は不可解以外の何物でもなく。首を捻る間もなく朝食の時刻になれば、元よりさして働いていなかった思考を強制的に遮断してダイニングに移る。主人は角砂糖のような食品で食事を済ませるため、この数週間自分の食事のみを作ってはいるが依然好物という好物はなく、新しく覚えたレシピを数日続けて作るという偏った食生活を送っている。今日も例に漏れず前日と同じフレンチトーストを作ったはずが、気付けばフライパンの中の卵液漬けのパンは所々黒く焦げてしまっていて。数秒静止するものの目立った感情の動きはなく、淡々と皿に移せばダイニングテーブルにそれを並べる。果実のジュースをコップに注いで隣に置いたところで扉が開くと、鈍く反応しては一拍遅れた挨拶を)
……おはようございます、リヴィオ様。
(/いえいえ、余計な心配でしたね……! 場面転換ありがとうございます。修正なんてとんでもないです、いつも返答しやすいロルを回していただいて本当にホスピタリティの塊だなと思っております……。大まかな流れについても把握いたしましたので、そちらを念頭に置きながらロルを書かせていただきますね! ある程度自由に設定を追加してしまっていますが、ちょっと違うかも……という点がございましたら書き直しますので仰ってくださいませ!)
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